高知論叢107号

高知論叢107号 page 41/180

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高齢者の長期療養ケアに関する一考察39〈B地区〉ここでは,仁淀川町高齢者総合福祉施設やデイサービスなどを利用している住民を対象にヒアリングを行った。この地区の自家用車保有世帯は総世帯の48.2%であり,7 地....

高齢者の長期療養ケアに関する一考察39〈B地区〉ここでは,仁淀川町高齢者総合福祉施設やデイサービスなどを利用している住民を対象にヒアリングを行った。この地区の自家用車保有世帯は総世帯の48.2%であり,7 地区のうちもっとも低い。道路事情も良くはなく,大雨などによる通行止めなどで交通手段が断たれる蓋然性のある地区である。住民の日常の買い物などでは,移動販売に頼ることが多く,デイサービス利用時には店舗での買い物も可能である。その他,近隣に住む子どもに頼むこともあるが,必要なものがあっても我慢することも多い。調査対象者の年齢は80歳代以上で,かつ要介護状態にあることから,健康に関する不安は強い。1 ~ 2 の医療機関を月に1回程度の頻度で受診するが,デイサービス利用時に近接する診療所などを受診している。この地区は最寄りの一般病院までの距離は約30キロメートル,所要時間は約55分,診療所までの距離は約17キロメートル,所要時間は約50分とされている。集落までは狭く急峻な山道が多くあり,自家用車を運転していく場合でも受診は容易ではない。持病があり,複数回入院した後,仁淀川町総合福祉センターなどの施設に入所した住民もいる。A地区と比べ特に,「交通手段が限られている」,「医療機関までの移動の時間がかかる」,「公共交通の便数が少ない」,「緊急時のすぐに受診できない」など,受診の際の不便さに関する回答が目立った。不便を感じたときには,「後日受診する」,「少しの不調なら受診しない」,「家族などに連れて行ってもらう」などの行動をとることが分かった。3.「無医地区」における医療アクセスに関する検討課題無医地区の住民を対象にした今回のヒアリング調査は,過疎および高齢化が進む中山間地における長期ケアのあり方を検討するための論点や課題を抽出するためのいわば予備調査の一環として実施したものである。したがって,調査対象のサンプリングや母集団の代表性には不十分な点や課題が残る。とはいえ,無医地区住民の生活状況や健康状態,医療アクセスの実態を把握することには,今後の調査研究の課題を設定するためにも意義がある。今回のヒアリングで聞かれた住民の声は,医療へのアクセスを含めた日常生