高知論叢107号

高知論叢107号 page 43/180

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高齢者の長期療養ケアに関する一考察41ら26万床に増加した一方,介護療養病床は約13万床から約8 万床に減少した5。介護療養病床を廃止する方針を維持したまま,2012年度以降は介護療養病床の新設を認めず,引き続き....

高齢者の長期療養ケアに関する一考察41ら26万床に増加した一方,介護療養病床は約13万床から約8 万床に減少した5。介護療養病床を廃止する方針を維持したまま,2012年度以降は介護療養病床の新設を認めず,引き続き老人保健施設等への転換を進めるとされている。こうした政策のもと,老人保健施設への転換を促進するために,入所者1人当たり床面積を暫定的に療養病床と同様の基準を認め,人員配置も介護職を減らし看護職を手厚くするなどして,従来型の老人保健施設よりも医療必要度の高い患者を受け入れることを可能とし,介護報酬も高く設定した「療養型老人保健施設」が創設された。しかしこの施設は,喀痰吸引や経管栄養を必要とする高齢者や著しい精神症状などを伴う認知症高齢者が一定割合以上入所していることや,新規入所者のうち医療機関を退院して入所する者が一定割合以上を占めることなどが条件とされている6。本調査結果にみられたように,療養型老人保健施設であっても,現在の介護報酬体系そのものや人員配置に限界があるなかで,頻回の吸引や経管栄養が必要な入所者の受け入れは今後も進まないと考えられる。今後医療の機能分化がさらに必要であることは明らかであるが,療養,看護,介護を総合した長期ケアが求められると考える。そのためにも病床転換のための移行措置や暫定措置の効果を検証する必要がある。今後特に,地方の中山間地を中心に過疎化と高齢化がさらに進むことが予想されるなか,無医地区をはじめとする地域の特性に配慮し,医療,介護のニーズをふまえ,受療やサービス利用の実態を明らかにしたうえで,地域の特性に応じた地域ケア体制を普遍的に整備し,その拠点や連携システムを構築することがもっとも重要である。疾病構造が大きく変貌し,長寿命化が顕著となるなか,21世紀に入った現代はまさに「病院の世紀の終焉」7を迎えつつあるといえる。疾病の治癒に最大の5 厚生労働省「介護療養型医療施設・介護療養型老人保健施設の基準・報酬について」(第84回社会保障審議会介護給付費分科会資料,2011. 11. 10)参照。6 厚生労働省「平成24年度介護報酬改定の概要」(第88回社会保障審議会介護給付費分科会資料,2012. 1. 25)参照。7 猪飼周平〔2010〕参照。猪飼は本書において,日本における医療システムの成立や発展を医師の分業と医療施設の所有のあり方から特徴づけ,治療医療を中心とする「病院