高知論叢107号

高知論叢107号 page 61/180

電子ブックを開く

このページは 高知論叢107号 の電子ブックに掲載されている61ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
共同漁業権論争の現在的地平59者である緒方の先行研究2の理論的な基礎づけ作業としての位置づけとなる。2 判例・裁判例を中心とした法解釈論的検討2-1. 問題の所在と分析視角共同漁業権の免許は漁業協同組合また....

共同漁業権論争の現在的地平59者である緒方の先行研究2の理論的な基礎づけ作業としての位置づけとなる。2 判例・裁判例を中心とした法解釈論的検討2-1. 問題の所在と分析視角共同漁業権の免許は漁業協同組合またはその連合会に与えられる一方(漁業法14条8 項),漁業協同組合の組合員(漁業者又は漁業従事者である者に限られる)であって,漁業協同組合またはその連合会の有する漁業権行使規則で規定する資格に該当する者は,その共同漁業権の範囲内で漁業を営む権利を有する(漁業法8 条1 項)。共同漁業権の法的性質をめぐる総有説と社員権説の争いは,組合が有する共同漁業権(漁業法14条8 項)と組合員が有する「漁業を営む権利」(漁業法8 条1 項)との関係をいかに解するかの問題であるといえる。総有説とは,共同漁業権は,その実質が明治以前の入会漁業と同じ性質の権利であり,陸における入会山野が実在的総合人である部落(一定の地域の住民団体)に総有的に帰属し,その管理は部落が行うが,収益権能は部落を構成する各人に平等に帰属するのと同様,共同漁業権が漁業協同組合に帰属する場合にも,組合は単なる形式的権利主体であって,管理権能を有するにすぎず,実質的な漁業を営む権利は組合に帰属する関係であり,この関係は昭和24年漁業法及び昭和37年改正法のもとにおいても本質的に変わっていない,とする3。社員権説とは,共同漁業権が法人としての漁業協同組合に帰属するのは,一2 緒方賢一「漁業権による沿岸海域の管理可能性  高知県の現状から」高知論叢・社会科学98号89頁以下(2010年,以下前掲論文①とする),同「沿岸海域の「共」的利用・管理と法」新保輝幸・松本充郎編『変容するコモンズ  フィールドと理論のはざまから』(ナカニシヤ出版,2012年)43頁以下(以下,前掲論文②とする)。3 魚住庸男「判解」『最高裁判所判例解説平成元年(中)』(法曹会,1991年)277頁の整理による。総有説の代表的なものとして我妻栄「鑑定書  昭和41年大阪府泉大津漁協の補償金配分をめぐる訴訟事件に関する鑑定書(昭和41年1月付)」浜本幸生監修・著『海の守り人論  徹底検証・漁業権と地先権』(まな出版企画,1996年)385頁以下(浜本幸生『共同漁業権論  平成元年七月十三日最高裁判決批判』(まな出版企画,1999年)180頁以下にも収録)があげられるが,後述するように総有説を採る学説の間でも見解を異にする問題がある。なお,我妻博士の鑑定書は本文[11]判決の裁判に提出されたものである。