高知論叢107号

高知論叢107号 page 64/180

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62 高知論叢 第107号とされている9。ここでの直接的目的は判例・裁判例の分析を通じて総有説の解釈論的意義を明らかにすることにあるが,総有説と社員権説では3 つの論点につき結論的にはほとんど差異がないように....

62 高知論叢 第107号とされている9。ここでの直接的目的は判例・裁判例の分析を通じて総有説の解釈論的意義を明らかにすることにあるが,総有説と社員権説では3 つの論点につき結論的にはほとんど差異がないように現前しているのはなぜか,あるいはそもそもそのような認識は妥当なのか,という点にも留意しつつ,判例及び裁判例につき検討を加えることにする10。2-2. 漁業権放棄の手続をめぐって(論点①について)(1)問題の所在裁判例においては,埋立に伴う漁業権放棄の手続に関する漁業協同組合の意思表明は,水産業協同組合法(以下,水協法とする)50条4 号所定の特別決議だけで足りるか,それとも漁業法8 条3 項の規定を類推適用し,漁業権の内容たる第一種共同漁業権を営んでいる組合員のうち関係地区に住所を有する者の3 分の2 以上の書面による総会前の同意までをも要すると解すべきかという形で問題となっている。水協法50条4 号は,漁業権又はこれに関する物権の設定,得喪又は変更については,総組合員の半数以上が出席し,その議決権の3分の2 以上の多数による議決を要すると規定する。一方,漁業法には共同漁業権の放棄に手続に関する条文はない。しかし,共同漁業権の放棄については,水協法50条4 号では足りず,漁業法8条3項を類推適用すべきであり,水協法の規定による総会の議決前に,組合員のうち,当該漁業権に係る漁業の免許の際において当該漁業権の内容たる漁業を営む者の区域内(関係地区)に住所を有するものの3 分の2 以上の書面による同意が必要であるとする見解が対立している11。9 中山・同上51頁。10 すでに緒方・前掲論文②(注1 )43頁以下でも,前掲最判平元・7・13について若干の検討を加えている。11 中尾英俊「共同漁業権の帰属と権利主体」西南学院大学法学論集105頁(1986年)(以下前掲論文②とする)は,共同漁業権の廃止につき,漁業法8 条が類推適用される根拠として,①漁業権放棄に関する規定が,漁業法におかれず水協法におかれたのは,組合が享有し自営する定置漁業権や区画漁業権を,個々の組合員に取得させるとか,あるい