高知論叢107号

高知論叢107号 page 65/180

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共同漁業権論争の現在的地平63(2)判例・裁判例判例・裁判例は,漁業協同組合の意思表明は,水協法50条4 号所定の特別決議だけで足りるとするものと,漁業法8 条の規定を類推適用し,漁業権の内容たる第一種共同漁....

共同漁業権論争の現在的地平63(2)判例・裁判例判例・裁判例は,漁業協同組合の意思表明は,水協法50条4 号所定の特別決議だけで足りるとするものと,漁業法8 条の規定を類推適用し,漁業権の内容たる第一種共同漁業権を営んでいる組合員のうち関係地区に住所を有する者の3 分の2 以上の書面による総会前の同意までをも要するとするものとに大別される。漁業法8 条の規定を類推適用するものとしては,[1]大分地判昭46・7・20訟務月報17巻11号1726頁,判時638号36頁(臼杵市風成地区公害予防闘争事件第一審判決〔公有水面埋立免許処取消請求事件〕)がある。同判決は,漁業権を一部放棄するについて,水協法50条4 号所定の特別決議のほかに,漁業法8 条の規定を類推適用し,漁業権の内容たる第一種共同漁業権を営んでいる組合員のうち関係地区に住所を有する者の3 分の2 以上の書面による総会前の同意,または総会時におけるこれらの者の明確な同意を要すると判示する。そして[1]判決の控訴審である[2]福岡高判昭48・10・19訟務月報20巻1 号50頁,判時718号9 頁は,原判決を支持している。これに対して[3]札幌地判昭51・7・29訟務月報22巻8 号1991頁,判時839号28頁(伊達火力発電所埋立免許処分等取消請求事件第一審決:[7]判決の一審判決)は,水協法50条4 号所定の特別決議だけで足りるとし,漁業権の変更などについては,漁業法8 条所定の手続を類推適用することを否定し,控訴審の[4]札幌高判昭57・6・22訟務月報29巻1 号101頁,判時1071号48頁もこれを支持している。また,[5]鹿児島地判昭62・5・29判時1249号46頁(志布志湾埋立訴訟第一審判決)は,総会での特別決議をもって,公有水面に関する共同漁業権を放棄したとする。同事件の控訴審である[6]福岡高宮崎支判平元・5・15判タ710号143頁は,一審判決と異なり,総会での特別決議により共同漁業権を放棄したとはしないものの,総会の特別決議を経て,県との間で共同漁業権の一部はより生産性の高い漁業に転換するため,組合経営の漁業にかぎって多数決による放棄を認めたものと解すべきであること,②水協法が公布された昭和23年当時,共同漁業権の放棄は予想されておらず,また新たな(24年漁業法による)共同漁業権も組合総有の権利であって漁民集団=組合が共同で享有するもので,組合が社団的に享有し組合が排他的に行使する権利とは解されなかったこと,等をあげる。