高知論叢107号

高知論叢107号 page 66/180

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64 高知論叢 第107号侵害から生じる物上請求権や損害賠償請求権など一切の権利を放棄する旨合意したとする。[5]判決は明示的に総有説を否定している。最高裁は,[4]判決の上告審判決である,[7]最判昭60・12....

64 高知論叢 第107号侵害から生じる物上請求権や損害賠償請求権など一切の権利を放棄する旨合意したとする。[5]判決は明示的に総有説を否定している。最高裁は,[4]判決の上告審判決である,[7]最判昭60・12・17裁民146号323頁,判時1179号56頁において,漁業権の変更につき同規定の適用はなく,また類推適用すべきものともいうことができないとした(理由は特に述べていない)。そして社員権説をとる[8]最判平元・7・13民集43巻7 号866頁(白木漁協訴訟最高裁判決)において,漁業法8 条類推適用否定説の立場が,判例法上確認されたといえる。なお,[9]仙台高判昭63・3・28訟務月報34巻10号1967頁,判例自治55号69頁(関根浜公有水面埋立差止請求事件第一審判決)は,[7]最判を引用して,水協法50条による総会の特別決議が必要であるが,それ以上に格別の手続は要しないとしている。(3)若干の検討総有説を支持する学説は,共同漁業権の放棄には水協法の漁業権の得喪に関する規定は適用されず,特別の慣習がない限り民法の規定に従うべきであるから,民法251条により組合員全員の同意が必要であると解する12が,特別の慣行が定着している場合はそれによることは認められると思われる。後述する論点②に関して[10]大分地判昭57・9・6民集43巻7 号876頁,金判830号11頁([8]最判の一審判決)が述べるように,水協法・漁業法の規範によるべきという意識が組合員に定着し慣行として成立している場合もあるだろう。さらに総有説の立場に立ちつつ,組合員の全員一致を要求はしないものの,総会での特別決議の要件に加えて,漁業法8 条の類推適用により書面同意の要件を加重すべきとする見解も出されている13。漁業権の消滅すなわち,漁業行使権の消滅なのであり,漁業を営む権利が生活に直結する組合員の存在のこと12 中尾・前掲論文②(注11)109頁,武井正臣「漁業紛争と漁業補償に関する諸問題」法社会学28号46頁(1975年)。13 中山・前掲論文(注5 )60頁。田平紀男「共同漁業権の入会権的性質」法の科学33号154頁(2003年)は,平成13年改正後のものであり,論点①ではなく意思決定全般に関する主張であるが,少なくとも書面同意の要件は,加重して,入会団体の通常の意思決定要件である全員同意に近づけるべきであるとする。