高知論叢107号

高知論叢107号 page 69/180

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共同漁業権論争の現在的地平67のか,また組合に属するとした場合,組合の一般財産または剰余金かが論じられている。補償金が組合に属するという立場であれば組合の多数決ないし特別多数決で決せられるという結論に帰....

共同漁業権論争の現在的地平67のか,また組合に属するとした場合,組合の一般財産または剰余金かが論じられている。補償金が組合に属するという立場であれば組合の多数決ないし特別多数決で決せられるという結論に帰着するであろう(もっとも組合に帰属するという場合,組合員への配分の問題は当然には出てこないとする見解もありうる。)。組合員ないし入会集団構成員に補償金が総有的に属すると解した場合,その配分手続は全員一致の原則によることになろう。(2)判例・裁判例総有説をとる裁判例においては,[11]大阪地判昭52・6・3下民28巻5 ?8 号655頁,判時865号22頁(泉大津漁業協同組合漁業補償金等分割請求事件第一審判決)および[12]福岡高判昭60・3・20民集43巻7 号880頁,金判830号6 頁([8]最判の原判決)がある。[11]判決は,補償金は組合の一般財産ではなく,組合員に総有的に帰属し,配分手続は,原則として全員一致により,協議が整わなければ,民法の共有物分割手続(258条1 項等)により総会決議(水協法48条1 項7 号)は不要であるとする。なお[11]判決は,補償金等は,収益権能喪失による損失を補償する目的で支払われたものとする。ただし,総有説をとりつつも,前掲[10]判決は,総有における全員一致の原則も入会集団の慣行の変化に従って修正されることがあるとし,組合においては,入会集団としての意思決定は組合の総会の決議によるべきであるとする規範意識が組合員に定着し,それが慣行として成立し承認されるに至っているという理由で,総会決議により多数決で補償金を配分できるとする(「特別決議を要するかどうかはともかくとして」と述べているところから,特別決議を必要と解する余地は残されている)。なお補償金が組合員に総有的に帰属するとは明言しないものの,[13]山口地宇部支判昭61・2・21判時1191号125頁は,管理処分権は漁協に属するが,収益権能は漁業権行使規則の規約上の資格に該当して漁業を営む権利を有する組合員に帰属するとしたうえで,補償金は組合員に対しその収益権の補償のために一括して支払われたもので,漁協の組合財産とはならず,各組合員に帰属するとする。ただし補償金は漁業権の変形物である面があるから,漁業権の仮処分