高知論叢107号

高知論叢107号 page 70/180

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68 高知論叢 第107号権能の変形したものとして,漁協に,本件補償金の配分(配分額決定)権限は,そのまま残るとする。社員権説をとる裁判例は,補償金が組合財産に帰属するとし,組合財産の剰余金とするが,その配....

68 高知論叢 第107号権能の変形したものとして,漁協に,本件補償金の配分(配分額決定)権限は,そのまま残るとする。社員権説をとる裁判例は,補償金が組合財産に帰属するとし,組合財産の剰余金とするが,その配分は特別決議によるとする。[14]富山地高岡支判昭43・5・8 判時554号64頁,および[15]鹿児島地判昭54・7・30判時948号99頁は,いずれも漁業補償金は,組合の有する共同漁業権放棄の対価であり,一種の清算剰余金の性質を有するから,その処分は総会の決議事項である(水協法48条1項6 号)とする。他方,補償金が組合財産に帰属するとする裁判例も,それが組合財産の剰余金以外の,一般財産から独立したものと解するものがある。[16]名古屋地判昭58・10・17判時1133号100頁(昭和37年改正前の漁業法に関するもの)がそれであるが,結論的にその配分は特別決議によるとする(水協法48条1 項9 号21,50条4 号22の趣旨に準じるとする)点では異ならない。なお[17]仙台高判昭62・1・22判タ631号219頁も,補償金の配分方法については,水協法50条の特別決議によるべきものであるとする。上記[8]最判は,補償金は,法人としての漁業協同組合に帰属するものとした上で,組合員に配分される方法については,漁業権の放棄について総会の特別決議を要するものとする水協法48条1 項9 号,50条4 号の規定の趣旨に照らし,補償金の配分は,総会の特別決議によって行うべきであるとする。ただし,[8]最判においては補償金の配分手続が総会の特別決議によるべきであるとしても,補償金の具体的配分の確定に関する手続は明らかではない。この点につき,[16]判決は,前記のように総会の特別決議によるとしたうえで,総会の決議により既存の総代会等を利用し,あるいは新たに配分委員会等を設置して,配分基準の設定等を含む配分作業を行わせることもできるとする。[8]最判以降の裁判例では,[18]熊本地玉名支判平3・1・29判時1391号159頁は,総会が損失補償金の配分を役員会に一任する決議も,特別決議が必要であると21 水協法48条1 項9 号は,漁業権行使規則若しくは入漁権行使規則又は遊漁規則の制定,変更及び廃止については総会の議決を経なければならない旨規定する。22 2-2.(1)「問題の所在」を参照。