高知論叢107号

高知論叢107号 page 71/180

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共同漁業権論争の現在的地平69する。[19]広島地判平6・5・23判時1549号94頁は,補償金の配分に関して,配分員会の選任,組合内の各部門への配分,個人への配分基準の同意につき,それぞれ総会の特別決議を要すると....

共同漁業権論争の現在的地平69する。[19]広島地判平6・5・23判時1549号94頁は,補償金の配分に関して,配分員会の選任,組合内の各部門への配分,個人への配分基準の同意につき,それぞれ総会の特別決議を要するとする。[18][19]両判決とも,[8]最判の趣旨を補償金の具体的配分に関する手続にまで敷衍したものといえる。なお,区画漁業権に関する事案であるが,[20]福岡高判平17・5・12判タ1198号273頁は,共同漁業権と同様,区画漁業権放棄の対価は組合に属し,原則として,特別決議を経た上で,現実に漁業を営むことができなくなる組合員に配分されるべきであるとしている。(3)若干の検討配分手続の問題を考える前提として,漁業補償は漁業権放棄の対価なのか,あるいは組合員の収益権能喪失に対する補償と考えるべきかという問題がある。漁業補償契約は,漁業権漁業だけでなく,自由漁業や許可漁業も含まれているのが一般的であるとされており23,例えば[8]最判の場合も,共同漁業権の内容である漁業(「うにや天草などのいざり漁」)のほか,共同漁業権の内容ではない「浮魚を運用漁具で取る漁業」である許可漁業,自由漁業の分をまとめ,一括して漁業補償を算定している。このような場合,少なくとも水協法50条による総会の特別議決だけでは不十分であり,漁民全員の同意が原則として必要であるという見解が主張されており,その論拠としては,(a)漁業補償契約の締結の手続きにあたっては,関係する組合員全員の同意をとって望むよう指導するとともに,(b)関係海面において,漁業を行っている組合員から委任行為が必要とする,水産庁の通達に求められている24。補償金の帰属先に関して,最高裁の判示するように,共同漁業権にかかる漁業についての補償金は,共同漁業権の帰属する組合だと解しても,許可漁業及び自由漁業についての補償金も契約上含まれているのであれば,それは,本来,23 浜本・前掲書(注3 )722頁,田中・前掲書(注6 )218頁。24 田中・前掲書(注6 )218頁。(a)については,「漁協計画の樹立に関する問答集について」(昭和47年9 月22日付け,47-290漁政部長)が,(b)については,「水産業協同組合法の解釈について 香川県経済労働部長に対する照会回答」(昭和51年3 月13日,51-1002 魚政部長)が掲記されている。