高知論叢107号

高知論叢107号 page 72/180

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70 高知論叢 第107号免許を受けた上で,許可漁業又は自由漁業を行使し生活上の利益を収めている組合員である漁民各自に帰属することになる25と考えるべきではないのかという疑問が生じる。補償金の帰属先を組合とす....

70 高知論叢 第107号免許を受けた上で,許可漁業又は自由漁業を行使し生活上の利益を収めている組合員である漁民各自に帰属することになる25と考えるべきではないのかという疑問が生じる。補償金の帰属先を組合とすることの難点は他にもある。[14][15]判決のように,補償金が組合財産に帰属するとしつつも,組合財産の剰余金とするものがある。しかし,そのように解すると,漁業補償金は水協法の規定にしたがって配分すべきことになり,補償金をそのまま組合員に配分する(配当する)ということは,法律上の根拠を欠くという指摘がなされている26。さらに,補償金は組合に帰属すると見解に対しては,補償金の配分は組合総会の通常決議だけで定めることができるという主張を許すことになるという批判がなされている27。ところで,補償金の配分手続に関して総会の特別決議で足りることにつき,中山教授の指摘通り,共同漁業権の法的性質論にかかわらず多数の裁判例および判例は一致しているようにも思えるが,総有説をとる[10]判決においては,「意識」の存在を媒介として水協法の規定の組合における定着という認定に基づき総会決議で足りるとしているのであり,あくまで総会決議で足りるとされる場合は,総有説では,全員一致の原則に対する例外的なものとして位置づけられるといえる。しかしながら,むろん,総会の特別決議で足りるとする見解の問題性は,合併が進むにつれ,入会集団が組合内において相対的により少数派になる趨勢にあるところ,総会の特別決議だけで足りるとすることは,入会集団の利益への配慮が足りないのではないかということにある28。25 浜本・前掲書(注3 )723頁。26 浜本・前掲論文(注6 )354頁によれば,水産業協同組合法については,漁業協同組合は,「剰余金」(毎事業年度末において総益金から総損金を差し引いた残額)が生じた場合には,損失を補填し法定の準備金及び繰越金を控除した後に,組合員に配当することができ(水協法56条1 項),その組合員に対する配当は,年8 パーセント以内で政令で定める割合(年7 パーセント以内)の出資額に応じる「出資配当」(その性質は,出資金の利子相当分である)と,事業の利用分量の割合に応じる「利用分量配当」(その性質は,取りすぎた組合施設の利用料の払い戻しであるとされる)とに,限られている(同条2項)。一括して受け取った漁業補償金が漁業協同組合に帰属するのであれば,この水協法の定める手続,方法によって処理すべきであることになる。27 中山・前掲論文(注5 )60頁,田平・前掲論文(注13)154頁。28 浜本・前掲論文(注6 )381頁以下によれば,[8]最判の舞台となった大分市白木漁業