高知論叢107号

高知論叢107号 page 73/180

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共同漁業権論争の現在的地平71総有説の立場からは,補償金は実在的総合人である入会集団ないし組合に属し,実在的総合人を規律する慣行的規範(基本的に入会集団全員の同意)に従って配分されるとする説2(9 以下,A....

共同漁業権論争の現在的地平71総有説の立場からは,補償金は実在的総合人である入会集団ないし組合に属し,実在的総合人を規律する慣行的規範(基本的に入会集団全員の同意)に従って配分されるとする説2(9 以下,A 説とする)のほか,平成13年改正後の漁業法31条を類推適用して関係地区漁民の書面同意に基づき配分されるとする説(以下,B 説とする)もありうるとされている30。しかしながら翻って思うに,論点②は論点①と一体の問題である31,あるいは組合の意思表明に共通する問題である32という認識に立てば,①につき先例的価値を失っている[8]最判は,この論点②についてもその意義を大きく減殺されているとみるべきである。(なお,総有説に立つ場合,各構成員に持分権を認めるべきか,学説は対立しているが,この問題に絡めて論点②については改めて後述する)2-4. 公共事業の事前差し止めをめぐって(論点③について)(1)問題の所在潮受堤防やダム排砂等の公共事業により漁業被害が継続して進行している場協同組合は,平成4 年に大分市内の他の三つの漁協と合併して,大分市漁業協同組合を設立した。大分市漁業協同組合の正組合員は,設立時188名,そのうち旧大分市白木漁業協同組合に所属していた者は,49名である。したがって,旧大分市白木漁業協同組合に所属していた組合員(49名)だけでは,大分市漁業協同組合の総会における特別決議の成立要件である3 分の2 以上の126名に及ばないどころか,特別決議を拒否する3 分の1 以上たる63名にすら及ばないことになる。29 我妻・前掲鑑定書(注3 )400頁,浜本・前掲書(注3 )723頁。熊本・前掲書②(注14)141頁は,入会集団は,内部的には構成員全員の同意を得るとともに,対外的にはひとつの団体としてひとつの意思表示をするという「入会集団の総員一致の原則」に基づけば,関係漁民全員の委任状を取った者(通常は漁協だが漁協でなくてもよい)が一括して補償金を受け取り,然る後に関係漁民全員の同意を得た配分基準に基づいて配分されることになるとする。30 田中・前掲書(注6 )227頁。中山・前掲論文(注5 )60頁は,漁業権の消滅に対する補償金の配分は,共同漁業権の消滅そのものと一体の問題として,総会の特別決議だけではなく,関係地区の組合員の3 分の2 以上の書面による事前同意をも要求している。田平・前掲論文(注12)154頁も,書面同意の要件は加重して全員同意に近づけるべきであるとする。31 中山・前掲論文(注5 )60頁。32 田平・前掲論文(注13)154頁。