高知論叢107号

高知論叢107号 page 75/180

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共同漁業権論争の現在的地平73場で,漁業行使権が第三者による侵害行為に対する差止請求の根拠となることを認める。[22]決定も,社員権説的理解により,漁協は共同漁業権に基づき,組合員は漁業行使権に基づき,立....

共同漁業権論争の現在的地平73場で,漁業行使権が第三者による侵害行為に対する差止請求の根拠となることを認める。[22]決定も,社員権説的理解により,漁協は共同漁業権に基づき,組合員は漁業行使権に基づき,立地調査の差止請求できると認めるが,許可漁業として行われているかかり釣り漁および自由漁業として行われている太刀魚漁も,漁業操業への妨害の程度により,妨害排除等の請求の根拠となりうる旨判示する点が目を引く。[25]判決は,総有説か社員権説かは明示していないと考えられるが,組合員の漁業行使権は,組合員はその第三者に対し,妨害排除請求もしくは損害賠償を請求することができるとする34。(3)若干の検討いずれの判決も組合の共同漁業権および組合員の漁業行使権が差止請求の根拠たり得ると判示している35。ただ[23][24]の2 判決においては,平成13年の漁業法改正(前出2-2(. 3))後も,依然として[8]最判が先例的機能を果たしていることが認められる。なお,[25]判決では組合員である原告らの有する損害賠償請求権は,組合の漁業権とは別に,個々に帰属するものであり,原告らの委任を受けることなく,その意思に反して行使,処分することはできず,原告らの損害賠償請求権は失われていないとする36。[23]判決および[24]判決については,共同漁業権の法的性質の理解により,差止請求権の成立要件が異なることが指摘されている37。[23]判決は,漁業を34 なお,[25]判決は,補償問題につき,[8]最判は共同漁業権の放棄の対価としての補償金の事案であるとして,[25]判決とは事案を異にするとしている。35 たとえば,坂本義夫「公害弁連第38回総会議案書各地裁判のたたかいの報告(ダム・干拓問題)(2)黒部川排砂被害訴訟報告(2009年3 月29日)」(http.//kogai-net.com/sokai/sokai38/291.html)では,[25]判決が漁協が有する「漁業権」とは別に,個々の漁業者の「漁業行使権」(漁業を営む権利)を物権的権利として認め,損害賠償及び侵害行為の差止・排除請求が基礎づけられたとして,高く評価する。36 大阪地判昭58・5・30判時1097号81頁も,社員権説の立場から,組合員の漁業を営む権利は,漁業権そのものではなく,基本権たる漁業権から派生している別個独立の権利であるから,漁業権者である組合が組合員の個別の授権なくして当然に漁業を営む権利を処分できるものではないとする。37 大塚直「判批」判評632号5 頁(判時2120号16頁)以下。