高知論叢107号

高知論叢107号 page 76/180

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74 高知論叢 第107号営む権利は,漁業権の範囲内で行使しうるものであり,海面の排他的総括的な支配権を取得するものではないから,物権的請求権発生のためには組合個人に損害が発生していることが必要とするが,[....

74 高知論叢 第107号営む権利は,漁業権の範囲内で行使しうるものであり,海面の排他的総括的な支配権を取得するものではないから,物権的請求権発生のためには組合個人に損害が発生していることが必要とするが,[24]判決は,漁業権の免許がされた漁場内において,漁業権の内容となっている漁獲量の有意な減少等が認められれば足り,個別の漁業権行使権者の漁獲量が実際に減少することを要しないとする。[8]最判の社員権説に従えば,[23]判決がそれに忠実な構成であるということになる38。総有説の立場からは,共同漁業権は,個人ではなく,集団が一定の海面を事実上排他的独占的に支配する権利と構成するので,[24]判決が妥当ということになろう,か。[23]判決を契機として漁業権自体に環境的利益保護の趣旨を読み込む見解が出されている39が,本稿の立場では,共同漁業権が,その有する入会権的性質に基づき,環境保全的機能と関連する利用秩序創出機能について,その可能性を3 で論及することにする。3 共同漁業権の法構造と機能3-1. 法構造現行漁業法を中心に総有説(共同漁業権の入会権的性質)の観点から現行法制度を沿革(1)と我妻鑑定書に関する問題(2)に即しつつ,概観しておく((3)(4)でさらに検討を行う)。(1)沿革潮見俊隆『漁村の構造』(岩波書店,1954年)を中心にして,共同漁業権に関する制度的変遷をたどることにする(以下の括弧内の数字は『漁村の構造』の38 大塚・同上6 頁。ただし[24]判決は漁業行使権の侵害の予防としての構成もありうるとする。39 奥田進一=久米一世「判批」環境法研究35号156頁(2010年)は漁業権自体に環境的利益保護の趣旨を読み込む。漁業権と環境保護の関係については,馬奈木昭雄「公害の予防及び補償と漁業権の関係」日本土地法学会『漁業権・行政指導・生産緑地法』(有斐閣,1995年)36頁も参照。