高知論叢107号

高知論叢107号 page 78/180

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76 高知論叢 第107号そして明治19(1886)年には「漁業組合準則」が制定される。これは,漁業集落等の入会団体や漁業者仲間等を「漁業組合」として公認し,旧来慣行を確認させ,維持させるものとなった。(23頁以下....

76 高知論叢 第107号そして明治19(1886)年には「漁業組合準則」が制定される。これは,漁業集落等の入会団体や漁業者仲間等を「漁業組合」として公認し,旧来慣行を確認させ,維持させるものとなった。(23頁以下)(c)明治34年漁業法と明治43年漁業法従来の地方別の漁業取締規則を統一して,国として統一した漁場調整を行い,漁場紛争の防止とともに資源保護を図ろうとする動きが明治26(1893)年以降活発になった。(29頁以下)明治34(1991)年に,初めての漁業法(明治34年漁業法,旧漁業法)が制定された。同法は,江戸末期の漁場利用関係を継承し,従来の「慣行」を漁業権として権利化した。漁業権のうち,沿岸漁業については,定置漁業権,区画漁業権,特別漁業権,専用漁業権の免許による管理を内容とした。(34頁,35頁)専用漁業権41は,慣行専用漁業権と地先水面漁業権に分かれるが,これらは,村中入会=一村専用の漁業を継受したものである。(35頁)また数村入会または他村入会の漁場は,入会権者の稼ぎ方の度合いの差に応じて,「共有ノ性質ヲ有スル入会」と「他人ノ専用漁場ニ入漁」するものとに区別された。前者については,入会権者にその出願に基づいて慣行専用漁業権を免許し,後者については,入漁権として規律することにした(免許は対抗要件)。(37頁)なお,定置漁業権,区画漁業権,特別漁業権,専用漁業権が免許漁業と区別して,洋上のカツオ・マグロ漁業のように独占・排他的な漁場が成立しない漁業権の対象とならない自由漁業を設けた。(37頁)その後明治43(1910)年に,明治34年漁業法は全面改正された(明治43年漁業法)が,漁業権制度については,旧漁業法をそのまま継承し,ただ漁業権および入漁権を物権化する改正が施された。(40頁)つづいて昭和8(1933)年には,漁業組合の目的事業を拡張して経済機能の強化をはかる漁業法の改正がなされた。また,昭和13年(1938年)には,組合が貯41 浜本・前掲書(注3 )768頁以下は,徳川時代に成立した,陸における入会山野の利用関係と同一の,「実在的総合人」が管理するところの「漁民のいう共同漁業権」(ゲルマン法の総有)が,明治34年漁業法によって,専用漁業権として近代的にローマ法流に翻訳されたが,この専用漁業権が現行法では「漁業法に規定する共同漁業権」であるとする。