高知論叢107号

高知論叢107号 page 80/180

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78 高知論叢 第107号順番である。(284頁)第二の特徴であるが,専用漁業権の消滅,共同漁業権の創設である。昭和24年漁業法は,漁業権に関しては,従来の専用漁業権に代わるものとして共同漁業権が創設され,定置....

78 高知論叢 第107号順番である。(284頁)第二の特徴であるが,専用漁業権の消滅,共同漁業権の創設である。昭和24年漁業法は,漁業権に関しては,従来の専用漁業権に代わるものとして共同漁業権が創設され,定置漁業権,区画漁業権,共同漁業権の3 種に整理した42。いわゆる浮魚対象の漁業が共同漁業権の対象外となった。(280,281頁)なお,第一の特徴で触れた,「適格性」と「優先順位」によって免許するという新しい調整方式の採用により,漁業権は従来どおり物権とみなされるものの,私権としての性質も弱められ,漁業権の貸付禁止あるいは譲渡や担保の制限などが加えられた。すなわち,先取特権・抵当権の設定が認められるのは区画漁業権と定置漁業権に限定される。また譲渡可能な場合も,相手方の「適格性」に加え,認可も必要とされる。また,漁業権存続期間は,従来が20年だったものが,定置漁業権が5 年,共同漁業権が10年と大幅に短縮された。(282頁)以上が,『漁村の構造』における漁業法の沿革と現漁業法に対する特徴付けの整理である。この第一の特徴として挙げられた,自営者免許の原則についてであるが,私見では,共同漁業権を自営者免許の原則に対する例外と位置づけることには躊躇せざるをえない。共同漁業権については,当初関係地区ごとに漁協が組織され免許が付与されていった経緯から,自営しているのは入会集団たる関係地区住民であり,また関係地区住民=組合と考えるべきであって(一関係地区一組合),組合に免許を与えることは,むしろ自営者免許の原則に沿ったものといえるからである。我妻鑑定書も,昭和24年の漁業法によって共同漁業権の入会権的性質が失われていないことの理由の説明の際に,「その漁業権の性格についていえば,あたかもかの農地改革がみずから耕作する者に農地所有権を与えることを根本方針としたのと同じく,漁業改革においても,沿岸漁業については,みずから漁業を営む者に漁業権を与えようとした」という記述がなされている43。42 我妻栄=有泉亨『新訂物権法(民法講義Ⅱ)』(岩波書店,1983年)454,455頁は,入会集団と違って,漁業協同組合は法人格を有し,漁業権は免許,入漁権は設定など,行政上の規制によっているが,実質的には,組合員からみて,定置漁業権,区画漁業権は共有の性質を有し,共同漁業権は共有の性質を有しない入会権に準ずるものとみている。43 我妻・前掲鑑定書(注3 )388頁。