高知論叢107号

高知論叢107号 page 82/180

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80 高知論叢 第107号理処分権能は団体に,使用収益権能は構成員に属するという入会権の内部構造に関するものである。二つ目は,意思決定に関連するより重要な問題であるが,漁協の二重的性格と合併に関係する問題で....

80 高知論叢 第107号理処分権能は団体に,使用収益権能は構成員に属するという入会権の内部構造に関するものである。二つ目は,意思決定に関連するより重要な問題であるが,漁協の二重的性格と合併に関係する問題である。三つ目は,第一,第二の課題と関連するが,組合員個人の持分に関する問題である。(a)まず,第一の問題点であるが,我妻説では,管理処分権能は組合に,使用収益権能は構成員に質的に属するとされているが,これに対して管理処分権能も収益権能も両者ともに,組合および構成員に属するとする中尾英俊教授の見解がある49。中尾教授によれば,組合にも使用収益権能があることは,漁業の場合においても漁業権の管理機関である漁業協同組合が漁業を自営することがあり,法も一定の制約のもとにこれを認めている(水協法17条)ことから説明される。また,入会集団=村落共同体は構成員の総体そのものであるから,各構成員の有する使用収益権能の総和として集団も使用収益権能を有し,(団体直轄利用),また構成員も集団の有する管理処分機能を分有しているのであってそれ故に構成員も一定の限度で処分権能(個人分割利用地の産物処分など)を有するとして50,この理を共同漁業権にもあてはめる。我妻説と中尾説の対立を解く鍵は,川島武宜博士の入会権論にあると思われる。ただ,それにとどまらず,川島博士の入会権論は,共同漁業権の法的性質を理解するための重要な手がかりとなるとの指摘がすでになされている51。この手がかりによって,第一に,現行法における入会権的性質を有する漁業権の多様性が,第二に,前記[8]最判の問題性と関連するが,免許が団体たる組合に付与されるものでありながら,共同漁業権が私有財産的性質ないし入会権的性質を有することが,それぞれ論証可能となる。そこで,川島博士の入会権論について入会権の主体に関する点を中心に一瞥49 中尾・前掲論文②(注11)107頁。50 中尾・同上106頁以下,同「「総有権」  判決を通じての考察」『黒木古希・現代法社会学の諸問題(上)』(民事法研究会,1992年)333頁(以下,前掲論文③とする)。51 田平・前掲論文(注13)151頁は,共同漁業権の法的性質を考察する上で,川島博士の議論に着目する。また,川島博士の入会権論をコモンズ論の観点をふまえて検討するものとして,鈴木龍也「入会理論の再検討」鈴木=富野暉一郎編著『コモンズ論再考』(晃洋書房,2006年)238頁以下がある。