高知論叢107号

高知論叢107号 page 83/180

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共同漁業権論争の現在的地平81しておこう(以下の括弧内の頁数は川島武宜「入会権」川島武宜編『注釈民法(7)物権2 』(有斐閣,1968年)507頁以下の頁数を示す)。川島博士によれば,入会権の主体とは,独立で・相....

共同漁業権論争の現在的地平81しておこう(以下の括弧内の頁数は川島武宜「入会権」川島武宜編『注釈民法(7)物権2 』(有斐閣,1968年)507頁以下の頁数を示す)。川島博士によれば,入会権の主体とは,独立で・相互に・平等な・構成員(すなわち仲間)によって成り立つ村落共同体であり,入会権とは共同体という団体関係において農耕地・林野水面を共同して所有する権利であり,また入会権は,仲間的共同体の物権的側面にすぎない。(512,514頁)そして仲間的共同体にあっては,団体は,構成員とは別の権利主体であるのではなく,多数構成員の集合そのものである。共同体の内部関係において,入会集団の管理者によって管理が行われ,全構成員(入会権者)はこれに従わねばならないが,このことは,管理権能が入会権者の総体以外の「入会集団そのもの」に属することを意味するものではなく,総入会権者が管理者にこの管理事務を委託したことによるものである。したがって,この法律関係を,総入会権者以外に存在する「入会集団そのもの」という概念をもって処理する必要はない。したがって,個々の入会権者が共同して有するのは,入会客体に対する利用権能だけではなく,管理および処分権能も入会権者に属する。(513,514頁)また入会権者が持分を有するか否かという点については,川島博士は,入会権者の有する権利は,仲間的共同体という共同関係において有する権利であり,しかもその権利客体は個々の権利者に分割されていないのであるから,これは一種の持分として概念構成されるべきであるとし,入会権者の有する権利を持分として概念構成しないことは不当であり,また入会権の私有財産的性格を曖昧にする結果となるとする。(515頁)川島博士の入会権論の意義の一つとして,従来の議論が主に入会稼に焦点を当ててきたことを批判して入会権の核心は主体の特質にあることを明らかにしたことが挙げられている52。すなわち,博士によれば,かつては入会権に基づく収益行為のもっとも重要なものが,草や下枝や植木等の共同収益(いわゆる入会稼,個別的利用形態または古典的利用形態ともいわれる)であったということは事実であるが,入会権の内容がそれにかぎられたわけではない。徳川時52 鈴木・前掲論文(注51)238頁。