高知論叢107号

高知論叢107号 page 85/180

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共同漁業権論争の現在的地平83第1 種だけではなく,第2 種から第5 種までの共同漁業権,ひいては区画漁業権および定置漁業権までが,入会権的性質を有する漁業の収益活動の多様性に応じて規定が編成されていることが....

共同漁業権論争の現在的地平83第1 種だけではなく,第2 種から第5 種までの共同漁業権,ひいては区画漁業権および定置漁業権までが,入会権的性質を有する漁業の収益活動の多様性に応じて規定が編成されていることが確認されるであろう5(8 しかし,逆に,このような理解からは,現行法における書面同意規定の不備が明らかになる。漁業法8条は,第1 種共同漁業権および特定区画漁業権の行使規則の制定・廃止・変更にのみ適用され,第2 種から第5 種共同漁業権には適用されないという点である59)。川島理論を手がかりとして,次に,免許が組合に付与されることと共同漁業権が私有財産的性質ないし入会権的性質を有することとの関係について検討したい。川島博士は,すでにみたように,入会権の主体である村落共同体を慣行上仲間的共同体であるとしているが,その村落共同体が代金を払って土地を購入し,その土地において共同で入会稼や造林をしたりする例が存在することについて,慣行上仲間的共同体たる性格・構造をもってきたという事実に基づいて,村落共同体が実質的に入会権を行使しているとする。ここから,博士は,入会権成立の前提要件としての「慣習」は,特定の土地についての入会の慣行の存在を内容とするものではなく,入会主体としての適格を有する仲間的共同体の存在を内容とするもので足るとする。従来の学説は契約により入会権が成立するこ58 中尾・前掲書(注1 )573頁は,第1 種共同漁業は,組合員たる漁民が各自漁業に入って自由に採補するのであるから入会権における古典的共同利用に相当するものであり,第2 種,第3 種共同漁業の小型定置網漁業や大型の地曳,船曳網は組合ないし漁民の集団が直轄して操業するので,入会権における団体直轄利用に相当するとする。また漁業協同組合が行う定置漁業権も同様に直轄利用の入会権であるといえるが,入会権における分割利用に該当するのは,漁業協同組合員が行う区画漁業であると述べる。田平・前掲論文(注13)151頁以下も,徳川期の海の入会的な利用慣行の漁業法における継受を詳らかにするが,細部を除いて,おおむね中尾教授の見解と一致する。59 中尾・前掲論文①(注11)112頁注(2),田平・前掲論文(注13)151頁。第2 種から第5 種の共同漁業権につき書面同意が必要とされない理由について,前記[2]判決は,第2 種ないし第4 種共同漁業権については,その漁法ないし漁場行使の実態上他の漁法による漁業との調整が問題であり,第5 種共同漁業権については,漁協に増殖義務が付加されていて,いずれも,漁協による管理面の必要が強調されたことによるものとする(判時718号19頁)。