高知論叢107号

高知論叢107号 page 89/180

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共同漁業権論争の現在的地平87法246条,258条1 項による共有物分割手続によって,預金債権を組合員らに分割している。配分に関する決定をめぐり紛争が生じる事態は,1 関係地区1 漁協ではない場合が多いと考えられる....

共同漁業権論争の現在的地平87法246条,258条1 項による共有物分割手続によって,預金債権を組合員らに分割している。配分に関する決定をめぐり紛争が生じる事態は,1 関係地区1 漁協ではない場合が多いと考えられることや,裁判所の負担を軽減し,紛争の長期化を防止するという観点からは,論点①と同じく,論点②においても総会の特別決議に加えて,関係地区漁民による事前の(全員一致に近づけるような形での)書面同意を要すると解するのが妥当ではないかと考える(2-3(. 3)のB説)。(3)漁業協同組合の合併が進むにつれ,「関係漁民全員」ないし「入会集団構成員」と「組合員」全体との乖離が進行することを理解することによって,共同漁業権が入会漁業権であることを前提とする法規の存在意義が明らかになる(この点につき熊本教授や田中氏らの先行業績があるのでここでは概要を述べるに留める)74。まず,漁協に加入していない関係地区漁民(入会集団構成員)を保護するための規定(員外者の保護規定)である漁業法14条11項が挙げられる。入会集団構成員,すなわち関係地区漁民が免許を受けた漁協に所属しないで第1 種又は第5 種の共同漁業権の行使をできるように関係地区に住所を有する漁民(個人)に海区漁業調整委員会が指示をする旨規定している75。つづいて,漁業法14条3 項は,入会集団構成員,すなわち関係地区漁民あるいは地元地区漁民が免許を受けた以外の漁協に所属した場合に,この漁業者が「共同漁業権」,「特定区画漁業権」の内容を行使できるよう地元地区漁民あるいは関係地区漁民が加入している漁業協同組合が,組合管理漁業権の免許の適格性を有する漁協あるいは漁業協同組合連合会(以下,漁連とする)に対し,漁業権の共同申請を行ったり,既に組合管理漁業権の免許を受けている漁協・漁連に対し,共有請求の申込を行う旨規定する76。さらに,平成13年漁業法・水産業協同組合法改正時に追加された「部会制度」74 熊本・前掲書①(注5 )83頁以下,田中・前掲書(注6 )243頁。75 熊本・同上85頁,田中・同上13頁。76 熊本・同上84頁以下,田中・同上13頁。