高知論叢107号

高知論叢107号 page 96/180

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94 高知論叢 第107号し,2013年4 月23日付で推進計画が認定された89。漁業法上,特定区画漁業権の優先順位は第1 位が漁業協同組合となっており,漁業協同組合が免許を受けない場合に限り下位順位の法人等が免許を受....

94 高知論叢 第107号し,2013年4 月23日付で推進計画が認定された89。漁業法上,特定区画漁業権の優先順位は第1 位が漁業協同組合となっており,漁業協同組合が免許を受けない場合に限り下位順位の法人等が免許を受けることができる(漁業法18条等)。石巻市桃浦地区水産業復興特区の推進計画では,地域のカキ養殖業の復興を目指して2012年8 月に設立された桃浦かき生産者合同会社を漁業協同組合と同順位(第1 位)にし,2013年の漁業権切り替えに合わせて免許しようとするものである。これは復興特区という限定された制度の中での事例であるが,既存の漁業権秩序に対して改変を加えるものである。本来1 位の漁業協同組合(宮城県漁業協同組合)は復興推進計画に反対しているが,計画では地元民中心の法人の参入であり,また事前の区割り調整等により参入に支障はないと判断している90。新規に外部から参入してくる民間出資の合同会社と,合併し関係地区からは離れた漁業協同組合のいずれが免許を受けるべきか,容易には判断がつかない問題であるが,こうした事態における判断をより正確に行うためには,第1 種共同漁業権が関係地区に免許され,その上に区画漁業権や定置漁業権が存在しているという構造を踏まえ,共同漁業権とその他に漁業権の相互関係について検討しておくことが必要である。また,東日本大震災の被災沿岸地域においては特に顕著であるが,そのほかの日本の沿岸地域においても,漁業集落の縮小傾向は顕著であり,地先の海を「自分たちの海」であるとする漁民が高齢化し,徐々に地先の海から退場し始めている91。漁業協同組合が広域合併しつつ,漁業権は関係地区ごとに残していき,表面上権利主体は盤石に見えていても,その内実の空洞化は着実に進んでいる。復興特区制度を利用し,外部資本を導入し局地的に復興が成り立ち,地域が活性化することはあるかもしれないが,地先の海の適正管理をどのよう89 復興推進計画【宮城県石巻市桃浦地区水産業復興特区】http://www.reconstruction.go.jp/topics/20130423_01_keikaku.pdf (2013年5 月31日参照)。また,水産業復興特区の申請に関する動向を検討するため,諸橋邦彦「水産業の復興をめぐる論点」(国立国会図書館『調査と情報』751号1-12頁,2012年5 月)を参照。電子版:Http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3491729_po_0751.pdf?contentNo=1(2013年5 月31日参照)。90 前掲注89,3 - 4 頁。91 緒方・前掲論文①(注2 )。