高知論叢108号

高知論叢108号 page 11/136

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性転換手術と刑法に関する一考察9らの知り合いで,これまで被告人に対して暴力をふるったり威圧的態度に出たことはなく,麻薬の譲渡を依頼した際も特に被告人を畏怖させるような言動に出たことは認められず,むしろ....

性転換手術と刑法に関する一考察9らの知り合いで,これまで被告人に対して暴力をふるったり威圧的態度に出たことはなく,麻薬の譲渡を依頼した際も特に被告人を畏怖させるような言動に出たことは認められず,むしろ幼な友達であることを利用して懇願していたことが認められ,Cに麻薬を喝取されたとは到底いい難い。さらに,被告人がCに対し積極的に対価を要求した気配はなく,第1 回目の譲渡の際にはCが一方的に6 万円を押しつけるように置いていったことが認められるが,第2 回目以後は被告人も格別受領を拒否することもしないで,受領した金員を返還しようとしたこともないことが認められるから,法律上やはり営利の目的があったといわざるを得ない,と判示した。ⅲ 第1 審裁判所の量刑判断最後に,量刑の理由として,第1 審は,公訴事実第2 の麻薬取締法違反についてはその数量が極めて多量であり約半年以上にわたる長期間に行われ,対価も薬価に比して甚だしく高かった点から考えると悪質という外ないが,動機原因や被告人が必ずしも積極的でなかった点を十分斟酌する必要があるとする。さらに公訴事実第1 の優生保護法違反については,刑事事件としては本邦で初めての事案であり,未だ同種の事業が法廷で論議されたことも全くない未開拓の分野に関するものであるばかりでなく,それが医療行為として許されるものか否かも未だ定説がなく,最近アメリカ等で研究的に一定の厳しい条件の下でこれを許そうとする傾向が生じて来つつあることを考えると本件についてもあまり厳しい量刑にすることはできないことを挙げ,麻薬取締法違反については懲役2 年(執行猶予3 年)および罰金の併科,優生保護法違反については,懲役刑を選択するのは酷に過ぎるので将来に向かって世間に警告を発する意味で罰金を科するのを相当とし,麻薬取締法違反の罰金を合算した範囲内で罰金40万円を科した。? 被告人側の控訴趣意の概要12第1 審の有罪判決を受けて被告人は控訴したが,原審と同様に,①被告人の12 「弁護人鹿野琢見外二名の控訴趣意書」高刑集23巻4 号763頁以下。