高知論叢108号

高知論叢108号 page 113/136

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限界集落における孤立化防止と共生の居場所づくり・地域づくり111かをふまえつつ,その人の心が普段着でいられる心の居場所を回復することでもある。その際,施設,自宅,地域のどこにいても,その人らしさがブレな....

限界集落における孤立化防止と共生の居場所づくり・地域づくり111かをふまえつつ,その人の心が普段着でいられる心の居場所を回復することでもある。その際,施設,自宅,地域のどこにいても,その人らしさがブレない,笑顔が消えないような環境,関係づくりが基本となる。施設に入っても,施設から地域に移行してもブレないような環境,関係づくりのためには,その人を知るということが最も大切になってくる。その人が,何を大切に生きて来られたのか,今後どのような生き方を望まれているのかをふまえつつ,その人の居場所があり,能力,興味・関心,役割,生きがいが発揮される機会があることによって,その人らしい生き方が前向きに実現されていく。たとえば,障害者が高齢者の身の回りの世話をしたり,子どもの笑顔が高齢者の生活意欲に刺激を与えたり,逆に高齢者が子どもに様々な生活の知恵や生き方を教えることを通じて,子どもがたくましく生き抜く勇気を与えられたり,そのことが高齢者の役割の再認識にもつながり得る。そのような共生の居場所づくりが面的な広がりを見せ,誰にとっても住みよい地域づくりが指向される時,共生の地域づくりの展開に結びつくことになる。そして,住民ベースの共生,「地域は家族」のような関係づくりに対応して,専門職ベースの垣根を取り払った包括ケアの関係づくりが進む時,孤立化や孤独死を生まず,住民誰にとっても安心のできるかけがえのない居場所と地域が再生されるであろう。注1) アマルティア・センの福祉経済思想については,(田中きよむ『改訂 少子高齢社会の福祉経済論』(中央法規出版,2006年)終章を参照。2) 高知県「県勢の主要指標」(平成24年度版)による。3)高知県「平成23年度 高知県集落調査報告書」(2012年3 月),同・別冊「集落代表者聞き取り調査結果報告書」4)同上・別冊「世帯アンケート調査(個人)結果報告書」5)高知県地域福祉政策課・中山間地域対策課の資料によれば,地域福祉(活動)計画は県下34市町村のうち,2013年度までに全市町村で策定予定,「あったかふれあいセンター」は2013年度までに27市町村35カ所及びサテライト型162カ所(計197カ所)の整備予定,「集落活動センター」は2012年度・2013年度で11カ所の整備予定,10年間で130カ所の整備が目標とされている。なお,「あったかふれあいセンター」は,2009~11年度は国の緊急雇用対策を活用する形で全額国庫補助が受けられていたが,