高知論叢108号

高知論叢108号 page 115/136

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113 研究ノート金融商品会計プロジェクトフェーズ2にみるIASBの会計基準設定の要点の変化山  内  高 太 郎  はじめに2008年のサブプライム・ローン問題による金融危機への対応として,2009年4 月にG20首脳会....

113 研究ノート金融商品会計プロジェクトフェーズ2にみるIASBの会計基準設定の要点の変化山  内  高 太 郎  はじめに2008年のサブプライム・ローン問題による金融危機への対応として,2009年4 月にG20首脳会合における宣言の中で国際会計基準審議会(IASB)の金融商品会計基準が問題とされた。G20の要請は,景気循環増幅効果の緩和,発生損失モデルによる貸倒引当金の見直し,国際的に単一の会計基準の作成といったことであったが,このうちとくに問題とされたのは発生損失モデルによる貸倒引当金の見直しであり,ここでの指摘は発生損失モデルにおける金融商品の減損損失の認識が遅すぎるということであった。この指摘に対応するためIASBは,金融商品会計プロジェクトのフェーズ2 で議論することとした。フェーズ2 は,当初,アメリカ財務会計基準審議会(FASB)との共同プロジェクトとして国際的に単一の会計基準の作成を目指し,2009年にIASB は,公開草案「金融商品:償却原価と減損」(以下,ED2009)を公表した。しかし,ED2009にたいするコメントやアウトリーチ活動1からED2009で提案されたモデルが実務において適用困難であることから,IASB は実務適用が可能な会計基準の開発が必要となった。本稿は,フェーズ2 における会計基準の開発の過程を通して,IASB の会計基準設定における要点の変化とその意味について考察を行うものである。高知論叢(社会科学)第105号 2012年11月