高知論叢108号

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114 高知論叢 第108号1.フェーズ2における問題点の整理サブプライム・ローン問題を契機とする国際的な金融危機への対応として開かれた2009年4月のG20首脳会合での要請をうけて,IASB は金融商品会計プロジェク....

114 高知論叢 第108号1.フェーズ2における問題点の整理サブプライム・ローン問題を契機とする国際的な金融危機への対応として開かれた2009年4月のG20首脳会合での要請をうけて,IASB は金融商品会計プロジェクトをフェーズ1「分類と測定」,フェーズ2「減損方法」,フェーズ3「ヘッジ会計」という3つにわけ改定を行うこととした2。このうちフェーズ2「減損方法」では,G20の要請の1つである発生損失モデルの見直しがとりあげられている。以下では,金融商品の減損が問題とされることとなった経緯およびその問題点についてまとめている。? 金融商品会計プロジェクトの経緯IASB の金融商品会計基準である国際会計基準(IAS)第39号3は,設定当初の時間的制約等からアメリカ基準を暫定的に用いたこと,2005年EU のIAS適用において一部がカーブアウト(適用除外)されたこと,さらに実務上IAS第39号が複雑で理解が難しいという批判が多かったことなどから問題を抱えた基準であったといえる。IASB とFASB は,2002年のノーウォーク合意(以下,MoU2002)により両会計基準のコンバージェンスを達成するために協力体制をとることになったが,金融商品についてはMoU2002の項目とされなかった。金融商品会計がIASBとFASB の共同プロジェクトとなるのは,2005年4月のIASB,FASB の合同会議においてであり,そこでは問題点として金融商品会計基準の複雑性がとりあげられ,その原因を混合測定属性モデルにあるという認識から公正価値による単一測定属性モデルを開発することが確認されている4。2006年,MoU2002がアップデートされ,金融商品会計プロジェクトはすでにリサーチ項目であるが議題となっていない項目に分類され,2008年までにデュー・プロセス文書を1つ以上公表することが目標とされた。この成果として2008年3月に,IASB はディスカッション・ペーパー「金融商品の報告における複雑性の低減」(以下,DP2008)を公表した。DP2008では,共同プロジェ