高知論叢108号

高知論叢108号 page 118/136

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116 高知論叢 第108号号の審議において発生損失モデルと予想損失モデル(expected losses model)を検討し,予想損失モデルによる減損損失の認識は償却原価モデルと一致しないため,発生損失モデルによると結論づけ....

116 高知論叢 第108号号の審議において発生損失モデルと予想損失モデル(expected losses model)を検討し,予想損失モデルによる減損損失の認識は償却原価モデルと一致しないため,発生損失モデルによると結論づけている9。この結果,減損損失の認識に必要とされる客観的証拠には,可能性のある(possible)または予想される(expected)将来のトレンド(future trend)は含まれないこととなった10。このことについてIAS 第39号の適用ガイダンスE.4.2では,貸付を行った際に過去の経験に基づいて貸付の一定割合が回収されないことが見込まれているという事例をあげ,この場合,貸付時に貸倒引当金の設定をとおして減損損失を認識できないことを示している。? IAS 第39号における金融資産の減損損失の測定IAS 第39号では,減損損失の測定を図表1のように定めている。償却原価で計上されている金融資産の場合,減損損失は当該金融資産の見積将来キャッシュ・フローと当該金融資産を当初の実効金利(effective interest rate)で割り引いた現在価値との差額となる。実効金利についてIAS 第39号パラグラフ9において「実効金利とは,当該金融商品の予想残存期間を通じての,将来の現金支払額または受取額の見積額を,当該金融資産または金融負債の正味帳簿価額まで正確に割り引く利率をいう」というように定義し,「実効金利を計算する際には,当該金融商品のすべての契約条件を考慮してキャッシュ・フローを見積もらなければならないが,将来の貸倒損失を考慮してはならない」としている。図表1 IAS 第39号における減損損失の測定方法償却原価で計上されている金融資産見積将来キャッシュ・フロー(発生していない将来の貸倒損失を除く)を当該金融資産の当初の実効金利で割り引いた現在価値との差額。取得原価で計上されている金融資産見積将来キャッシュ・フローを類似の金融資産の現在の市場利回りで割り引いた現在価値との差額。売却可能金融資産資本性商品の場合は,取得原価と現在の公正価値との差額。負債性商品の場合は,償却原価と公正価値との差額。(出所:IAS 第39号パラグラフ63~70,あずさ監査法人『ケース・スタディIFRS の金融商品会計』中央経済社,2011年,65~66頁を参考に筆者が作成。)