高知論叢108号

高知論叢108号 page 12/136

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10 高知論叢 第108号本件行為は正当な医療行為である,②本件手術は優生保護法第28条の対象にはならないから,法令適用の誤りがある,との二点を争った。控訴趣意によると,①において,原判決が「軽率の謗りを免れ....

10 高知論叢 第108号本件行為は正当な医療行為である,②本件手術は優生保護法第28条の対象にはならないから,法令適用の誤りがある,との二点を争った。控訴趣意によると,①において,原判決が「軽率の謗りを免れない」と判断したことは事実に反すると主張する。原判決の挙げる要件を欠くことが直ちに医療行為を違法なものとすることには疑問があり,治療行為として一般に挙げられる条件を具備する本件手術は正当な治療行為であり,原判決指摘の要件を適法化要件に加えることは治療の前進をこばみ,消極的な医師に責任のがれの口実を与える結果になると主張する。また②においては,本件手術は性転換手術の一環としての治療的医学的去勢であるから,優生保護法第28条の対象にはなりえず,また特に控訴審における被告人側の主張として,同条構成要件の「生殖を不能にさせることを目的」としていないことを強調し,同条を適用することは誤りであると主張した。3 判決要旨13被告人側の控訴に対し,東京高判昭和45年11月11日は下記の通り判断し,本件去勢手術は,(一)正当な医療行為といえず,(二)優生保護法28条にいわゆる「手術」とは優生手術(同法2 条1 項参照)のみにかぎらず去勢手術をも含むものと解するのが相当として被告人の控訴を棄却した。「被告人に被手術者等に対する性転向症治療の目的があり,被手術者等に真に本件手術を右治療のため行う必要があって,且本件手術が右治療の方法として医学上一般に承認されているといいうるかについては,甚だ疑問の存するところであり,未だ本件手術を正当な医療行為と断定するに足らない。原判決が,性転向症者に対する性転換手術が法的に正当な医療行為として評価されるために必要な条件を掲げ,本件手術が右条件に適合しない点が多いので,これを正当な医療行為として容認できない旨判示しているのは,その表現において右判示するところと稍異るけれども,略同旨であると考えられるのであって,正当な結論であるというべく,……原判決に所論のような事実誤認があるとは認め13 東京高判昭和45年11月11日高刑集23巻4 号759頁以下,判時639号107頁以下,判タ259号202頁以下。