高知論叢108号

高知論叢108号 page 125/136

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金融商品会計プロジェクトフェーズ2にみるIASBの会計基準設定の要点の変化123の移動は,判断の重要性と作成者の恣意性をともなう可能性があるが,IASBはfaithfully represent を重視していることがED2013の各所で強....

金融商品会計プロジェクトフェーズ2にみるIASBの会計基準設定の要点の変化123の移動は,判断の重要性と作成者の恣意性をともなう可能性があるが,IASBはfaithfully represent を重視していることがED2013の各所で強調されている。図表5 ED2013で提案されているモデル当初認識以降の信用品質の悪化ステージ1 ステージ2 ステージ3予想信用損失の認識12ヶ月の予想信用損失全期間の予想信用損失全期間の予想信用損失利息収益総額での帳簿価額×実効利子総額での帳簿価額×実効利子償却原価の帳簿価額×実効利子( 出所:IASB, Exposure Draft, Snapshot : Financial Instruments : Expected Credit Losses,Mar. 2013, p6. を参考に筆者作成)? ED2013の問題点ED2013の問題点として,まず予想信用損失の認識において12ヶ月の予想信用損失による認識があげられる。ED2013では,AV1以下にED2013の公開に反対票を投じたクーパー氏の見解を示している。その中で同氏は,12ヶ月という期間に概念上の根拠がないことや,経済実態を反映できない可能性があることを指摘している。結果としてIAS 第39号よりも改善となるが,ED2009には劣ると考えられ,コストとベネフィットの関係が適切ではないと主張している。この指摘は,faithfully represent の問題であるといえる。12ヶ月という期間内の予想信用損失の算定は,IAS 第39号よりも早期に減損の認識を行えるという点で改善であるが,そこで表される数値は経済実態を描き出していない可能性があるため,faithfully represent となっておらず,また,コストはED2009よりも減らすことができるかもしれない(すべての実体のコストが減るわけではないことはED2013の中で指摘されている)が,経済実態を描き出さない可能性がある情報のベネフィットに問題があり,コストとベネフィットは適切ではないと考えているということである。こうした意見がある一方で,日本公認会計士協会はED2013へのコメントの中で,ステージ1において全期間の予想信用損失を認識することがfaithfully