高知論叢108号

高知論叢108号 page 126/136

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124 高知論叢 第108号represent ではないという意見をだしている24。また,日本の全国銀行協会のコメントでは,12ヶ月の予想信用損失による認識は,日本における信用リスク管理とそれにもとづく会計処理と概ね整合....

124 高知論叢 第108号represent ではないという意見をだしている24。また,日本の全国銀行協会のコメントでは,12ヶ月の予想信用損失による認識は,日本における信用リスク管理とそれにもとづく会計処理と概ね整合していることから同意できるが,ステージ1からステージ2への移動の要件である信用リスクの著しい増加を相対的アプローチで判断することには反対するとしている。IASB は,信用リスクの著しい増加を絶対的アプローチで行うか,相対的アプローチで行うか検討した結果,絶対的アプローチは当初の信用損失の期待値および事後的な期待値の変化の経済的影響に近似しないということから相対的アプローチを選択した25。ここで問題とされたのは,faithfully represent というよりも,絶対的アプローチのために設定される識閾(threshold)の選択であった。つまり,IASB の主張は,絶対的アプローチでは識閾の選択により経済実態を表さないため,相対的アプローチがfaithfully represent であるとしている。一方,全国銀行協会のコメントでは実際に行っている信用リスク管理の実務と相対的アプローチは整合的でないため経済実態をあらわしていないと考えられる。情報利用者の立場である日本証券アナリスト協会のコメントでは,12ヶ月の予想信用損失による認識はモデルの構造が複雑でわかりにくく,一般の事業会社が使いこなすのは難しいと考えられ,その結果公表される情報の信頼性が低くなるということを懸念しているという意見が述べられている。日本の企業会計基準委員会(ASBJ)は,ED2013の実務への適用の困難さから,代替的アプローチを提案している。これらのコメントに共通して述べられていることは,国際的に単一の会計基準を作成することの要望とIASB,FASB いずれの提案も実務上の適用という観点から改善の余地があるというものである。? 財務報告に関する概念フレームワークにおけるfaithful representationIASB の概念フレームワーク26では,有用な財務情報の質的特徴としてrelevance(目的適合性)とfaithful representation(誠実な表示27)をあげている。概念フレームワークのQC12では,perfectly faithful representation であるた