高知論叢108号

高知論叢108号 page 127/136

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金融商品会計プロジェクトフェーズ2にみるIASBの会計基準設定の要点の変化125めには,「complete」「neutral」「free from error」という3つの特徴をもつことが述べられ,IASB の目的はこれらの特徴を可能な限り最....

金融商品会計プロジェクトフェーズ2にみるIASBの会計基準設定の要点の変化125めには,「complete」「neutral」「free from error」という3つの特徴をもつことが述べられ,IASB の目的はこれらの特徴を可能な限り最大化することにあるとしている。また,faithful representation は正確(accurate)であることを意味しないという。つまり,情報利用者に経済実態を描き出すことができるようにするということであり,必ずしも現象との一致を意味していないということである28。faithful representation は,IASB の概念フレームワークの見直しにおけるフェーズ1の結果として2010年に公表した「有用な財務情報の質的特徴」において,それまで用いられていたreliability(信頼性)から置き換えられた特徴である。2013年7月にIASB が公表したディスカッション・ペーパー「財務報告に関する概念フレームワークの見直し(A Review of the ConceptualFramework for Financial Reporting)」(以下,DP2013)においても,IASB はこれらの章の内容を根本的に再検討しないとしている29。しかし,DP2013のその他の論点の中でreliability(信頼性)からfaithful representation(誠実な表示)に置き換えたという決定にたいする懸念がのべられ,とくにreliability(信頼性)の他の側面の1つであるprudence(慎重性)を削除したことについてとりあげている30。IASB がprudence(慎重性)を削除した理由は,neutral(中立性)との間に問題が生じ,ある期の過小表示は次の期の過大表示につながることが多いためであるとしている31。prudence(慎重性)を削除したことが懸念としてあげられるのは,未だに多くの人が保守的な会計処理に反対していないということやこの考え方がIASB の基準設定を行う際の決定の多くに反映されているためであるとしている32。? ED2013におけるfaithfully represent の意味ED2013では,faithfully represent と作成にかかるコストとベネフィットが強調されている。上述したようにfaithfully represent は,必ずしも経済現象そのものを正確に描きだすということが求められるものではなく,多くの実務慣行の中から一般的に合理化できるものやそうした会計実務に合致しているも