高知論叢108号

高知論叢108号 page 128/136

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126 高知論叢 第108号のを描きだすということが含まれている。ED2013の中でfaithfully represent が強調され,有用な情報のもうひとつの特徴であるrelevance(目的適合性)が強く示されていない。これは,会計基準....

126 高知論叢 第108号のを描きだすということが含まれている。ED2013の中でfaithfully represent が強調され,有用な情報のもうひとつの特徴であるrelevance(目的適合性)が強く示されていない。これは,会計基準形成において情報利用者の有用性よりも作成者のコストとベネフィットを重視した結果であると考えられる。作成者のコストとベネフィットは,基準設定においてまず重視すべきものとして考えられているため,こうした会計基準形成は論理的に問題ないといえる。しかし,作成者のコストとベネフィットを重視しすぎた会計情報は,情報利用者のrelevance と必ずしも合致しないことから,社会的な合意を得ることが難しくなると考えられる。こうした状況において,faithfully represent は,作成者と情報利用者の合意できる点を導き出す役割を果たしていると考えられる。また,G20への要請に対応するためフェーズ2における会計基準は,金融機関を中心に行われているリスク管理などの会計実務の状況を明らかにする必要があった。こうした経緯から作成された会計基準は,日本証券アナリスト協会のコメントにみられるように,金融機関のように信用リスクを管理している実体にとっては影響が少なく(コストが少なく)かつ実務上faithfully representな情報を作成可能である一方で,そうでない一般企業には影響が大きく(コストが多く),モデルの複雑性からfaithfully represent な情報を作成できない可能性がある。IASB がフェーズ2で作成しようとしている会計基準は,金融機関を対象とした特定目的の会計基準ではなく,一般目的の会計基準である。このため会計基準形成において,作成者間における合意形成が重要な意味をもつ。faithfully represent は,金融機関を中心とした会計慣行を一般目的化するという意味で機能していると考えられる。5.金融商品会計プロジェクトフェーズ2にみるIASB の会計基準 設定の要点の変化IASB の金融商品会計プロジェクトフェーズ2は,金融商品の減損問題を公正価値ではなく償却原価を基礎に作成されているという点で,IAS 第39号か