高知論叢108号

高知論叢108号 page 129/136

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金融商品会計プロジェクトフェーズ2にみるIASBの会計基準設定の要点の変化127らED2013に至るまでその考え方は一貫しているといえる。IAS 第39号の基準の審議過程において,発生損失モデルと予想損失モデルを検討し....

金融商品会計プロジェクトフェーズ2にみるIASBの会計基準設定の要点の変化127らED2013に至るまでその考え方は一貫しているといえる。IAS 第39号の基準の審議過程において,発生損失モデルと予想損失モデルを検討し,償却原価モデルと整合しないという理由から発生損失モデルによる基準作成を決定したという経緯がある33。このことは,当時の実務慣行を踏まえるとともに,論理的整合性を重視した結果といえる。その後,金融危機への対応として公表されたED2009においても,発生損失の代替モデルを模索する上で,公正価値に基づくアプローチや景気循環(through?the-cycle)アプローチについて検討されたが,最終的に実効金利を用い償却原価を基礎とした予想損失モデルを論理的に開発している。しかし,ED2009にたいするコメント等で実務上適用が困難であるという意見がIASB に寄せられた結果,問題の焦点となったオープン・ポートフォリオで管理する金融資産の減損に限定してED2009の補足を公表した。また,IASB とFASB の共通の解決を見いだすという意味を含めて,ED2009の補足はIASB とFASB 共同で公表された。しかし,ED2009の補足における提案に対して両審議会は強い支持を得ることができなかった34。このため,両審議会は新たに3バケット・モデルを開発した。ED2009の補足以降のIASB の検討状況35をみると,問題の焦点はIASB とFASB 共通の会計基準の作成と実務上適用可能な会計基準を開発することに重点がおかれたといえる。しかし,IASB とFASB のそれぞれの利害関係者の意見等から共同プロジェクトとして会計基準の開発をすすめることに限界が生じ,その後,別々に提案を行うということになった。こうした経緯で公表されたED2013は,ED2009の考え方,3バケット・モデルをもとに作成されているものの,作成者の負担軽減を強く意識したものとなり,結果として,ED2013で算定される数値はED2009で算定される数値よりも論理的根拠が弱いものとなった。このため,IASB はfaithfully representを強調することで論理的補強を行い,会計基準設定の合理化を行ったと考えられる。このようなIASB の金融商品会計プロジェクトフェーズ2における基準作成上の要点の変化は,G20による要請の影響というだけでなく,それまでの