高知論叢108号

高知論叢108号 page 17/136

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性転換手術と刑法に関する一考察15? 高木武の見解法学者の高木武は,第1 審判決の判例評釈において,判旨に疑問を提起33しつつも,結論としては優生保護法を適用した判決を肯定している。すなわち,判旨が,内外の....

性転換手術と刑法に関する一考察15? 高木武の見解法学者の高木武は,第1 審判決の判例評釈において,判旨に疑問を提起33しつつも,結論としては優生保護法を適用した判決を肯定している。すなわち,判旨が,内外の文献,外国における研究の成果,その評価などと本件との関係が明白ではないこと,性転換手術のわが国の医学界における位置,評価が不明または不適当であること,医学界の決するような事項にも立入りすぎていることに対して疑問を呈している34。そして,目的治療説から本件を評価すれば,性転換手術は,診療ではなく,そのためわが国では性転換手術が公然ではなく,密かに個人開業医によって行われ,被告人は診療録を正規に作成せず,受術者から同意書をとらないなど一般の診療と異なる取扱いを強いることが,わが国における性転換手術の医学界 医師界の一般的評価すなわち診療でないということを,如実に示しているとする35。加えて,診療録を作成せず,手術の同意書をとることなく行ったことから,被告人は本件手術を診療とはみていないと推定され,診療の目的があったかはきわめて疑わしいとする36。しかし結論としては,「判旨は,優生保護法つまり行政法体系における事案として,あえて刑法的理論によらず,性転換手術が診療でないということを明白にしながら,すすめられたようである。これは,当然であり,相当である。」37として,本件が優生保護法第28条の適用を相当と考えることを肯定している38。? 高島学司の見解医事法学者の高島も,下記の通り一方で医師の自家規制を待つべきものとしつつも,他方で本件去勢手術が優生手術に含まれることが勿論解釈として一応可能であると述べている。すなわち,控訴審判決は,その表現においてはやや33 高木武「優生保護法第28条違反の罪の成立を認めた事例」『東洋法学』第13巻第1 号(1969年)136頁。34 高木・前掲注33141頁以下。35 高木・前掲注33142頁。36 高木・前掲注33143頁。37 同上。38 高木・前掲注33144頁。