高知論叢108号

高知論叢108号 page 49/136

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行政の判断過程における過誤欠落に関する一考察47義については,いまさら説明するまでもないが1,特に第一,第三ミュルハイム・ケルリッヒ判決を選んだ理由については,あらかじめここで述べておくことが,以降の理....

行政の判断過程における過誤欠落に関する一考察47義については,いまさら説明するまでもないが1,特に第一,第三ミュルハイム・ケルリッヒ判決を選んだ理由については,あらかじめここで述べておくことが,以降の理解について有益であろう。ドイツのヴィール判決は,すでにいくつかの紹介があるように2,原子力発電所の安全性に関する行政の判断に対して,司法が実体的審査を行うことを抑制し,判断過程の統制を示唆した著名な判決である。この判決は,それ以降の事実審 ヴィール判決は,結局,証拠調べのあり方論になる および上告審である連邦行政裁判所の先例になっていったが,実際の具体的事例の審理において,異なる審査密度が示された。この点で顕著な差異が出たのがミュルハイム・ケルリッヒの原子力発電所をめぐる第一と第三の二つの判決である。筆者の試みは,この二つの審査密度の差異を,審査が及ぶ論証過程の段階の差として捉える。そしてこの視点から今度はわが国のもんじゅ判決についても分析を進めるものである。以下,まず2 ではヴィール判決及びそれ以降の展開を概観する。次に,3 でミュルハイム・ケルリッヒ原子力発電所を巡る二つの判決をみる。その後4 ではドイツ行政法の分析的論証理論で知られるコッホの学説に依拠しつつ,この二つの判決で行われている論証過程の追試方法を分析する。そして5 ではもんじゅ差戻後控訴審判決を同様の方法で分析し,最後に若干の私見を述べることにする。2.ヴィール判決とそれ以降の展開1985年の連邦行政裁判所ヴィール判決3はわが国でもしばしば言及されるドイツ原子力訴訟に関する著名な判決である。事例は加圧水型原子力発電所を建1 とりわけ,高木光『技術基準と行政手続』(弘文堂,1995),同 『行政訴訟論』(有斐閣,2005),高橋滋『現代型訴訟と行政裁量』(弘文堂,1990),同『先端技術の行政法理』(岩波書店,1998)を参照。2 注1)の文献また,その他いくつかについては,赤間聡「環境基準としての規範具体化行政規則 判例および「規範具体化」の意味を中心に 」青山法学論集46巻3号(2004)92~38頁,注2)参照。3 BVerwGE 72, 300.