高知論叢108号

高知論叢108号 page 5/136

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性転換手術と刑法に関する一考察3との苦情を受けて捜査を開始した警察は,男娼やゲイボーイの取締りを企図したが,男娼に対して売春防止法を適用できないという問題に直面した6。これらの男娼が,本件被告人から性転....

性転換手術と刑法に関する一考察3との苦情を受けて捜査を開始した警察は,男娼やゲイボーイの取締りを企図したが,男娼に対して売春防止法を適用できないという問題に直面した6。これらの男娼が,本件被告人から性転換手術を受け,他にも同じ手術を受けた者がいることを認知した警察・検察は,風紀上野放しにしておくわけにはいかないとして,優生保護法違反事件として立件することにしたという7。本件第1 審判決8の認定によれば,被告人は昭和23年9 月A医科大学を卒業,昭和25年医師免許証の交付を受けるとともに同大学産婦人科教室の助手となり,昭和31年に医学博士号を取得して翌年から同講師をつとめていたが,そのかたわら昭和26年以来,実兄が開設した診療所B医院において産婦人科の担当医として診療に従事してきたものであるところ,第1 , いずれもB医院において,男娼から睾丸摘出,陰茎切除,造膣等一連のいわゆる性転換手術をもとめられるやこれに応じ,法定の除外事由がないのに故なく生殖を不能にすることを目的として,?昭和39年5 月13日頃,X(当時22歳)に対しその睾丸全摘出手術をし,?同年11月15日頃,Y(当時23歳)に対しその睾丸全摘出手術をし,?前同日頃,Z(当時21歳)に対しその睾丸全摘出手術をし,第2 , 麻薬営業者ではなく,法定の除外事由もないのに,?昭和40年3 月5 日頃,B医院において,Cから麻薬の譲渡を依頼され,一旦は拒絶したものの,なお執拗に要求されたためこれを拒み切れず,翌6 日頃,B医院においてCに対し,医療用麻薬オピアト注射液1 ミリリットル入りアンプル10本を代金合計60,000円で譲渡し,?その後も毎々Cから麻薬の譲渡を依頼されるやその都度,営利の目的をもって,昭和40年4 月6 日頃から同年9 月9 日頃までの間に前後15回にわたり,B医院において,Cに対し医療用麻薬オピアト注射液1 ミリリットル入りアンプル10本ずつを代金50,000円ないし60,000円で(合計150本,代価合計830,000円)譲渡6 内藤道興「生体鑑定 性転換手術事件 」『警察学論集』24巻8 号(1971年)145頁。7 同上。8 東京地判昭和44年2 月15日刑事裁判月報1 巻2 号133頁以下,判時551号26頁以下,判タ233号231頁以下。