高知論叢108号

高知論叢108号 page 54/136

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52 高知論叢 第108号審査に限られる。それでも,この審査は調査内容に関する判断を一切抜きにしてできるものではない。安全審査で求められる内容はどのようなもので,行政はどのような調査が利用可能であったか,を....

52 高知論叢 第108号審査に限られる。それでも,この審査は調査内容に関する判断を一切抜きにしてできるものではない。安全審査で求められる内容はどのようなもので,行政はどのような調査が利用可能であったか,を判断する必要があるからである。実際,上の96年判決では従来の放射線に関する見解はどのような影響について4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4答えるもので,原告の不安の根拠になる新しい知識は何に関する4 4 4 4 4 判断なのか,ということが問われている21。このようにみる時,調査欠落審査は専門的判断の妥当性そのものには及ばないにしても,その判断の有効領域の確定及び こちらが重要だが 複数の専門的判断の論理的関係にまでは及ぶといえる。そして,その結果として,行政が主張する既存の防護措置正当化に「論理の飛躍」を見出す場合には,調査欠落がありとして,行政処分を取消すこともできることになる。この点については,以下では二つの判決をみながら,調査欠落審査のあり方を検討していくことにする。3.第一,第三ミュルハイム・ケルリッヒ判決1960年代後半,ラインラント=プファルツ州のミュルハイム・ケルリッヒに原子力発電所の設置計画が立てられ,1975年には事業者に第一次部分許可が与えられた。しかし,この許可には最初から問題があった。許可では原子炉建屋とその他の施設を同一敷地内に一体として立てるコンパクトタイプが予定されていたが,1974年の許可手続の最中に,敷地の一部に断層が,そして別の一部には粘土質の頑丈でない部分があることが地質調査から判明した。にもかかわらず,事業者と許可庁は許可後に施設を分離タイプにし,かつ設置場所も変更することで合意し,許可庁はそのままオリジナルのプランに対して許可を出した。そしてその後原子炉建屋の位置がオリジナルプランとは70メートルほど離れたところにする変更プランが了承され,この新プランに対して,1977年に第二次部分許可が出された。これに対して原告が第一次部分許可の取消しを求めて提訴したのが,第一ミュルハイム・ケルリッヒ事件である22。判決では第一21 BVerwGE 101, 347(361).22 BVerwGE 80, 207. この間に憲法異議もあったが,その点については,山田洋「行政