高知論叢108号

高知論叢108号 page 55/136

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行政の判断過程における過誤欠落に関する一考察53次部分許可と第二次部分許可の関係如何など,いくつかの争点があるが,ここでは調査欠落についてだけみていくことにする。判決は極めて単純である。まず,行政は実践....

行政の判断過程における過誤欠落に関する一考察53次部分許可と第二次部分許可の関係如何など,いくつかの争点があるが,ここでは調査欠落についてだけみていくことにする。判決は極めて単純である。まず,行政は実践理性により排除されないリスクがまだ明確化されていないうちは,そして防護措置について確信を持てない場合には,許可を出すことは許されない,とし,判決は調査・評価の徹底を行政に義務づける。そしてこれがなされないまま決定が出される時は調査欠落になり,処分の取消は免れないとする。ただし,リスクは一旦考慮されば,それが軽視されたとしても,裁判所はそのリスクが現実に存在するか否かについては実体判断しない,とも加えられている。その上で,当該事例においては,第一次部分許可の対象は,決して実現する見込みがないことが分かり切っていた架空のオリジナルプランであったと認定,地質調査は変更後のプランのために使われたものであるから,オリジナルプランについてはしっかりした調査がなされないまま許可が出されたとし,この第一次部分許可を取消した23。その後,事業者はこの敗訴の原因は形式的な問題であると考え,正式な新しい建設計画の申請を行った。行政はこの新しいプランに対して様々な鑑定を実施し,1990年に第一次部分許可を出した。これに対して住民らによって再度取消訴訟が提起された。まず,すでに取消された1975年の第一次部分許可の効力と新しく出された第一次部分許可との関係が争われた後,実質的な安全性問題が焦点になったのが第三ミュルハイム・ケルリッヒ事件である24。ここで控訴審は調査欠落を認め第一次部分許可を取消した。そして,上告審でもこれが支持されたのである。判決は基本的にはヴィール判決を踏襲しているが,大きな違いはリスク調査とリスク評価を切り離し,特にリスク評価に行政の優先的判断権を関わらせている点である。判決はいう。行政の優先的判断権はもっぱら政治的4 4 4 に答えられ手続きへの参加権: 西ドイツ連邦憲法裁決定をめぐって」一橋研究6 巻3 号(1981)112~125頁参照。なお,判決は前半部分で原子力法上及び原子力手続令上の手続瑕疵の問題を,後半部分で設置許可要件充足(原子力法7 条2 項)の問題を議論している。23 BVerwGE 80, 207(216-217).24 BVerwGE 106, 115.