高知論叢108号

高知論叢108号 page 64/136

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62 高知論叢 第108号加えて,裁判所は行政によるA∧B∧C∧D→Y…を追試しながら,同時に法解釈として,リスクが不明のままにされた場合には調査欠落が認定され,許可は禁止されるそのような項目4 4 4 4 4 4 4 ....

62 高知論叢 第108号加えて,裁判所は行政によるA∧B∧C∧D→Y…を追試しながら,同時に法解釈として,リスクが不明のままにされた場合には調査欠落が認定され,許可は禁止されるそのような項目4 4 4 4 4 4 4 を,あらかじめ事実認定前に定めておく必要がある。このために,裁判所は行政による論理の展開を踏まえつつ,これに肯定・否定の評価を加えながらも これは後述のもんじゅ裁判における漏えいナトリウムの熱的影響と審査項目との関係に関わる ,自身固有の取消のための論理式を定立していくことになる43。これは実体判断なしにはできない作業であることは明らかである。問題はどのレベルの,どのようなタイプの判断に実体判断が禁止されるか,という点に尽きる。(ウ)原子法における安全審査論証とヘンぺル・オッペンハイムモデル科学法則,工学的判断を含む論証に対して,裁判所はどのように追試しうるか,この点をまずは,再びコッホの科学的論証についての見解を参考にしながら検討したい。まず,科学的論証は連邦インミッシオン防止法の例で示したとおり,法解釈・具体化のために必要になるが,さらに,事実認定において証拠から事実を推論する時にも使用される。コッホはこの論証形式を基本的にはいわゆるヘンぺル・オッペンハイムモデル=演繹的法則的モデルに求めている44。これは説明項(explanans)に1)法則と2)初期条件を置き,被説明項(explanandum)である3)事実 それは過去でも将来でも構わない を導き出す推論形式である。これを原子力の安全性論証においてみると,1)の法則には,たとえば,応力解析の前提となる力学法則や材質の耐性に関する経験則,あるいは学説として通用している仮説 設計基準地震認定の前提となる地震についての一般的考え方等 などが入り,2)には予定荷重や歴史地震等を置く,そしてこの二つから論理操作により,3)被説明項である予測される事実を導43 このように,ある意味で形成的な 行政作用の形成性とは異なる 司法作用は法理論上否定され得ない。これについては,Koch / Rusmann 前掲注(29)85-103. また,行政裁量を討議論証理論(Argumentationstheorie)の点から分析したアレクシーの裁量瑕疵論も結局はここに行きつく。Robert Alexy, Ermessensfehler, JZ 1986, 701-716.44 Koch / Rusmann 前掲注(29)271-345. ただし,厳密には,確率論がらみの議論があるので,それほど単純ではない。