高知論叢108号

高知論叢108号 page 73/136

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行政の判断過程における過誤欠落に関する一考察71(イ)判決「各論」とelement 判断さて,各論では¬A(2次主冷却系設備の機能不全になるとはいえない)の具体化として,行政の安全審査における,「事故発生の防止....

行政の判断過程における過誤欠落に関する一考察71(イ)判決「各論」とelement 判断さて,各論では¬A(2次主冷却系設備の機能不全になるとはいえない)の具体化として,行政の安全審査における,「事故発生の防止のための対策」及び「事故拡大の防止のための対策」の項目に依拠しつつ,主として配管の健全性(P),漏えいの場合の対策(Q)が展開されている。これを単純化するとP(配管の健全)∧Q(漏れた場合の対策が万全)→ ¬ Aである。ここで問題視されたのがQである。Qは行政の安全審査では高温ナトリウムが燃焼しても建屋のコンクリートと接触しないこと(E),漏えいナトリウムの熱的影響により建物の健全性が損なわれないこと(F)が中心となる。E,Fは共に予備の冷却ループ損傷を惹き起こす蓋然性があり,結果としてA(2次主冷却系設備の機能不全)の蓋然性を高めるからである。従って,E∧F→Q(漏れた場合の対策が万全)→ ¬ Aとなる。このうちE(ナトリウムーコンクリート接触)は高温ナトリウムに耐えうる中間物の設置(G)で論証される。F(建屋健全性)はナトリウム燃焼に伴うコンクリート温度上昇によるコンクリート脆化がないこと(H),及びナトリウム燃焼による内圧の上昇対して建物の耐圧が十分であること(I)によって論証される。したがって,G→E,H∧I→Fとなる。そうするとG,H,Iの論証が終局的な実験と法則の適用場面となる。これを既にみたヘンぺル・オッペンハイムモデルを念頭に分析してみたい。(ウ)判決「各論」におけるヘンぺル・オッペンハイムモデル繰り返しになるが,ヘンぺル・オッペンハイムモデルは説明項に1)法則,あるいは仮説,2)初期条件となるデータを置く,そしてこの二つから論理操作により,3)被説明項である事実を導き出す推論形式である。これをまずG(高温ナトリウムに耐えうる中間物の設置)についてみると,行政の論理は1)に床ライナの材質である鋼の融点は約1500℃である,という法則を,2)の条件には床ライナの設計温度530℃(変更前500℃)であるを置く,そしてこのことから漏えい時に予測される事実である3)床ライナは高温ナトリウムで溶けるはずがない,を導き出している。ここから,Gは正当化される。しかし,ナトリウム漏えい事故及び事故後の二つの実験から熱による溶融以外に,化学反