高知論叢108号

高知論叢108号 page 74/136

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72 高知論叢 第108号応による腐食によって金属が浸食されることが分かった。したがって,1)の法則部分は熱溶融に加えて,腐食に関するものも加えないと,Gは正当化されないことになった。すなわち,熱溶融の法則....

72 高知論叢 第108号応による腐食によって金属が浸食されることが分かった。したがって,1)の法則部分は熱溶融に加えて,腐食に関するものも加えないと,Gは正当化されないことになった。すなわち,熱溶融の法則によって高温ナトリウムに耐えうる中間物であり(J),かつ化学腐食法則によって高温ナトリウムに耐えうる中間物(K)の場合にGである。J∧K→Gである。Kがなければ,Gも論証できない。そしてGが論証されなければ,連鎖的にE(コンクリート接触がない),Q(漏れた場合の対策が万全),¬A(2次主冷却系設備の機能不全になるとはいえない)の論証が成功しないことになる。ここKの欠如に,裁判所は過誤欠落を見出している。「高温のナトリウムと鉄の腐食機構の知見を,本件申請者及び本件安全審査に携わった関係者が本件ナトリウム漏えい事故が発生するまで有していなかった」,したがって,「床ライナを含む2次主冷却施設に腐食を考慮した対策が盛り込まれていないことは当然である。そうだとすれば,2次冷却材漏えい事故の安全審査に過誤,欠落があったと認められる」という部分である。なお,行政の主張の一つにKの調査は,原子炉設置許可段階における審査事項には含まれない,というものがある。設置許可段階では基本設計に限定され,腐食問題は具体的設計段階の問題であるという立場である。しかし,この議論は法概念の具体化の視点からは,少し奇妙に思える。というのは,評価の考え方から導き出されるG(高温ナトリウムに耐えうる中間物の設置)の具体化の点からみれば,JとKはともに同一レベルの下位範疇となる。そうであるならば,安全審査指針で挙げられているナトリウム火災防止策の具体化であるこの二つをあえて分離して審査することは,それを明示する規定がない限り,不自然に思えるからである。次に,H(ナトリウム燃焼によるコンクリート脆化がないこと),I(ナトリウム燃焼による建物の耐圧が十分であること)について。行政の論理は,1)の法則にはナトリウム燃焼の法則,及びそれに伴う内圧変化の法則を,2)の条件にはナトリウム漏れの初期の様態を置く,そしてこのことから漏えい時に予測される事実である3)屋内の雰囲気の温度(530℃),及び内圧を導き出し,コンクリートの耐熱値と耐圧値を比較して,H及びIを論証している。ここでも判決はナトリウム事故及びその後の二つの実験から,初期条件,法則,事実