高知論叢108号

高知論叢108号 page 75/136

電子ブックを開く

このページは 高知論叢108号 の電子ブックに掲載されている75ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
行政の判断過程における過誤欠落に関する一考察73を全て否定している。「ナトリウムの中小規模漏えいの場合のスプレイ燃焼のことを考慮していなかったからであり」,結果として「本件ナトリウム漏えい事故の配管室の....

行政の判断過程における過誤欠落に関する一考察73を全て否定している。「ナトリウムの中小規模漏えいの場合のスプレイ燃焼のことを考慮していなかったからであり」,結果として「本件ナトリウム漏えい事故の配管室の床ライナは最高で750℃と推定され」る,と。さらに,判決は床ライナの熱的膨張による予期せぬ事態も考慮に入れている。ここから判決は「本件申請者の解析結果が不正確なものであったことは否定しようがなく,これを看過した本件安全審査は,その評価,判断に過誤・欠落があったことは明らかである」と帰結する。(エ)欠落の重大性以上みたとおり,判決はとりわけG(高温ナトリウムに耐えうる中間物の設置)とH(ナトリウム燃焼によるコンクリート脆化がないこと)に行政の論証の失敗,過誤欠落を見出している。そして,それがすでに示した重大性に該当するかという点については,総論と結び付けて以下のようにまとめている。安全審査は,「ナトリウムと鉄との腐食機構の知見を欠いていたため,床ライナの健全性の評価を誤り,また,ナトリウム 水反応,ナトリウム火災の解析が不十分であったため,床ライナの加熱による最高温度の評価を誤るという結果を招いてしまった。このような瑕疵ある安全審査では,「2次冷却材漏えい事故」の事故拡大防止対策が万全であることが確認されたといえないことは明らかである」と。すなわち,既に挙げたように,¬ Gと¬ Hは連鎖して,¬ Q(漏れた場合の対策が万全とはいえない),そしてここから¬¬A(2次主冷却系設備の機能不全になるとはいえない,とはいえない)に至る。そして判決はさらに,¬¬A をAとして,大枠判断におけるY(放射性物質が周辺の環境に放出される事態)につなげている。「このように,事故拡大防止対策が万全とはいえないとなれば,最悪の事態も想定しなければならない」「ナトリウム-コンクリート反応が生じた場合,それが他の冷却系ループに具体的にどのような影響を及ぼすかを正確に予測することはできないけれども,事故ループ以外の冷却系ループが正常に機能する保障は全くない」「仮に事故ループ以外の残り2ループの冷却能力も同時に失われる最悪の事態になれば,たとえ原子炉の緊急停止に成功しても,その後も核燃料から発生する崩壊熱を冷却することができ