高知論叢108号

高知論叢108号 page 80/136

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78 高知論叢 第108号れ,他の事にも挑戦しようとする意欲が湧いたり,得意になり,自己肯定感が育まれる。他方で,その自分の力を高めていくプロセスは,他の人との人間関係によって支えられている面がある。たとえ....

78 高知論叢 第108号れ,他の事にも挑戦しようとする意欲が湧いたり,得意になり,自己肯定感が育まれる。他方で,その自分の力を高めていくプロセスは,他の人との人間関係によって支えられている面がある。たとえば,ある認知症の女性は,現役の時は看護師としてバリバリ働いていた方であったが,ピック病による認知症になり,すごく徘徊されるようになった。素早く歩き回る彼女であったが,時々,私は「なぜこんなに歩くのだろう,なぜできないのだろう」とつぶやかれる。できていた時の自分と,できなくなった自分が同一人物の中で同居している。そのような認知症を葛藤型というが,彼女はある意味,徘徊しながら,自分の心の居場所を求めている。そのような場合,できなくなった辛さや悲しみ,悔しさに寄り添えるような人間関係があるかどうか,病気や要介護など,いろんなことで支援を要する状態になった場合,人間力のベクトルが下がった時,その方の気持ちに寄り添える関係性があるかどうかが非常に重要になってくる。地域福祉には,「社会福祉の眼」と「福祉社会の眼」という複眼思考が求められる。「社会福祉の眼」は,高齢者や障害者,児童一人ひとりの個別ニーズに即した支援をおこなう視点を意味する。ただ,この個別支援について,特定の施設,事業所内だけで磨きをかけて,地域の様々な関係機関との連携をあまり取らないまま,個別支援の眼だけを持とうとすると,社会や地域の課題に眼が向かないおそれがある。社会福祉の目だけではなく福祉社会を作る眼,この複眼思考によって地域に個別支援の展開により住民一人ひとりを大切にする眼住民の自治力による地域の持続可能性や暮らしやすさを望む眼個別支援計画と個別福祉計画に基づく専門的支援地域福祉(活動)計画に基づく住民主体の地域づくり同じ住民として共感し,支えあう共生の関係社会福祉の眼福祉社会の眼(個別支援をめざす) (地域開発をめざす)地域の豊かな暮らし