高知論叢108号

高知論叢108号 page 83/136

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限界集落における孤立化防止と共生の居場所づくり・地域づくり81駆けつけることは難しい。日頃のつながりが特に重要となる。また,高知県内でも,高齢者の「孤独死」が起こっている。2012年に高知市で起こった孤独死....

限界集落における孤立化防止と共生の居場所づくり・地域づくり81駆けつけることは難しい。日頃のつながりが特に重要となる。また,高知県内でも,高齢者の「孤独死」が起こっている。2012年に高知市で起こった孤独死事件は大きく報道されたが,福祉事務所長に確認したところ,電気料金等の公共料金の支払いは行われており,生活に困っているわけではなかった。誰とも関係を断ち,亡くなられたことが約2年に亘り,誰にも気づかれなかった。虐待についても同じことが言える。子育てに関する不安や悩みを誰にも相談できず,子育てが孤立化する「孤育て」の状態になることが虐待の背景になっている場合がある。さらに,ホームレスの場合,地域から受け容れられることもなく,居場所のない状況に置かれている。様々な意味での「孤立化」ということが今日の社会現象や生活困窮問題を考えるうえでの一つのキーワードになる。家族のような関係性を地域の中で意識的に再生することによって,孤立化に伴う様々な問題に早く気づき,ニーズをキャッチして対応を図っていく必要がある。家族のような共生関係を地域社会の中で意識的に再生していかなければ,高齢者世帯の孤立化,児童虐待,いじめ,引きこもり,ゴミ屋敷,ホームレス,貧困家庭等の子どもの学習支援課題,障害者の就労問題,震災による地域孤立化や仮設住居における孤独死など,多様化した貧困や生活問題は解決しえない,と言えよう。高齢者の孤独死,障害者の孤立化や差別化,児童の虐待や教育・医療機会の問題,ホームレス問題などは,地域社会の中での孤立化,社会的に排除される問題であるが,その課題を克服することは,一人ひとりのニーズに即した支援をおこないつつ,地域社会に包摂することを意味する。地域の中で孤立している人や気になっている人に関して,その方がどういう状況でお住まいになり,健康状態であるのか,訪問してどうだったのか,その方と社会資源との関係や距離はどうか,ということを支え合いマップを作って,確認,共有化してみるのも一つの方法である(注10)。高知県四万十町では,独居高齢者がどういう社会資源と結びついているか,健康状態はどうか,訪問してみて気づいたことなども記入するチェックシートも作られている。四万十市西土佐地区では,防災マップを活用しながら,5つの小地域単位で支え合いマップが作られ,それによって高齢者世帯や65歳未満のひきこもりの方等の状況を