109号

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いわゆる「高知白バイ事件」の再審請求について9ている。さて,X側はスリップ痕について,その由来を強く争っていたが,裁判所は以下のように判断して,それがX車両によるものと認定している。まず,判決は「スリ....

いわゆる「高知白バイ事件」の再審請求について9ている。さて,X側はスリップ痕について,その由来を強く争っていたが,裁判所は以下のように判断して,それがX車両によるものと認定している。まず,判決は「スリップ痕とともに被告人が被告人運転車両運転席に乗車している様子などが撮影されている写真がある」16というが,被告人Xが乗車している状態を撮影したものとスリップ痕がそれと分かるように撮影した写真を一枚の写真として撮影することが可能か疑問であるし,撮影時が「逮捕される前であることが明らか」17とするのみで,必ずしも正確な撮影時間が確定判決において特定されている訳ではない。また,ABS 作動によりスリップ痕はつかないのではという疑問についても,低速で作動しないことがありうるという可能性論にとどまっている18。また,衆人環視だったことを理由に「ねつ造する可能性はほとんどなかった」とするが,現場で事故車両の撤去作業等とスリップ痕の作為との違いを見分けうる人間は少ないといえなくもない。さらにスリップ痕を撮影した写真のうち,スリップ痕の先頭部分が濃くなっているとの点についても,現場に流出した液体によるものとしてねつ造を否定する19が,先頭部分が濃くなった経過を明らかにできないことが,それにもかかわらず本当に本件事故によるスリップということに何ら影響しないのかも,気になるところである。さらに,路面擦過痕についても,その写真に関するスリップ痕と同様の判示のほか,その写真からアスファルト表面の粒子が削られている状況が認められると判断しているが,単に写真を見て削られているように見えるだけではないことのさらなる根拠を求めたいところでもあろう。その他,実況見分の実施方法について,一旦逮捕により現場から引き離し,あるいは警察車両からXに指示説明させた点などの弁護人からの批判についても,実況見分時の事情等を理由に退けている20。16 前掲注(10)6 頁。17 同前。18 同前参照。19 同前7 頁参照。20 同前9 頁参照。