109号

109号 page 12/104

電子ブックを開く

このページは 109号 の電子ブックに掲載されている12ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
10 高知論叢 第109号さて,第一審判決は,事実認定上の大きな争点として,衝突地点及び衝突態様,衝突直前のX車両の運動状態,衝突直前の被害者運転車両の運動状態の三点について判示している。衝突地点及び衝突態....

10 高知論叢 第109号さて,第一審判決は,事実認定上の大きな争点として,衝突地点及び衝突態様,衝突直前のX車両の運動状態,衝突直前の被害者運転車両の運動状態の三点について判示している。衝突地点及び衝突態様での争点は,バスが止まっているところに白バイが衝突したか,あるいは動いているバスに衝突後に,バスが停止したかであるが,判決はほぼ直角に向きを転じる路面擦過痕やX運転車両の前方に衝突による破片が散乱していることを根拠として,進行中のバスに白バイが衝突したと認定している21。しかし,バスが停止しているところに衝突した白バイが何ら回避行動をとらなかったのか疑問であり,そのような検討はなされていないうえに,X車両の後方につけていた校長及びバスに乗車していた教員のバスは停止していたとの証言については,これらの路面擦過痕と反するというだけで証明力が乏しいと判断22しており,むしろ「客観的証拠」をさらに慎重に検討すべきであったのではないかとも思われる。一見,客観的に見える証拠だからこそ,逆に危険なこともあるであろう。衝突直前のX運転車両の運動状態については,単純にスリップ痕を前提にして,時速約10キロメートルであったと認定23している。衝突直前の被害者運転車両の運動状態については,X車両のスリップ痕を参考に衝突直後における両者の運動合成量を算出し,これを乗員を含む被害者運転車両の質量で除算して被害者運転車両の速度を概算(30ないし60キロメートル)し,また対向車線を走行中だった白バイ隊員(証人A)の目測(60キロメートル程度)から,「時速約60キロメートルあるいはこれを若干上回る程度」24と認定しているが,ここでもX側証人として,白バイの後方を走っていた証人Eの目測で時速100キロメートルとの証言については,白バイが前方10メートル前に合流してきたので軽くブレーキを踏んだとの供述部分を捉えて不自然と評価し,白バイの速度に関する時速約100キロメートルとの目測をも否定するのである25が,合流の際の白バイの速度如何によれば,「軽くブレーキを踏む」21 同前11頁参照。22 同前13頁参照。23 同前。24 同前16頁。25 同前17頁参照。