109号

109号 page 14/104

電子ブックを開く

このページは 109号 の電子ブックに掲載されている14ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
12 高知論叢 第109号とが大いにありうる点に鑑みれば,このような量刑判断は被告人が自己の認識と異なることを自認しなければ不利益に扱われることを避けられず,多くの刑事裁判例でも類似の状況が見られるものの,....

12 高知論叢 第109号とが大いにありうる点に鑑みれば,このような量刑判断は被告人が自己の認識と異なることを自認しなければ不利益に扱われることを避けられず,多くの刑事裁判例でも類似の状況が見られるものの,過失犯における注意義務の具体的内容のほかにも,黙秘権や適正手続との関係で検討の余地があるように思われる。第一審有罪判決に対するXの控訴について,高松高判平成19年10月30日判例集未掲載28は,原判決を追認するだけで,一回の口頭弁論を開くのみで控訴を退けた。基本的に第一審と異なるところはないが,若干第一審より踏み込んでいる点があるので,本件の事実認定の検討のために,以下,簡単にそれらの点に言及するにとどめたい。まず,注目されるのは,過失の注意義務の点であり,控訴審判決は,「北行き車線に進入してから横断を終えるまで,北行き車線を進行する車両の有無及びその安全確認を十分にしなければならないことは当然であり,北行き車線右方向の見通しもそれなりに良好であって,被告人は,上記安全確認を十分にしていれば,V車に容易に気付いて衝突を回避し得たものである。それにもかかわらず,被告人は,衝突するまでV車に全く気付かなかったのであるから,被告人には上記安全確認を十分にしなかった過失がある」と判示29している。しかし,これでは,右方を進行する車両を常時注意しなければならないうえに,車両の進行に気づいて静止しても衝突した以上は責任を問われることにならないかとの疑問もあるのではなかろうか。スリップ痕の色が濃い部分についても,「その発生機序は正確には不明」30としつつも,「スリップ痕様のものの由来の認定に影響を及ぼすものではない」31とするだけである。28 高松高判平成19年10月30日判例集未掲載。URL: http://haruhikosien.com/2sinhanketu.pdf(2014年9 月1 日検索)参照。29 同前6 頁。なお,同20頁でも,「安全義務を課せられていたのは,北行き車線に進入してから同車線の横断を終えるまでの間であって,③地点に限られない」と判示する。なお,③は国道直前のX車が国道侵入前に一旦停車した位置である。30 同前9 頁。31 同前。