109号

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いわゆる「高知白バイ事件」の再審請求について13路面擦過痕についても,「⑤地点で衝突した自動二輪車が,急旋回しただけで直角に曲がった上記のような擦過痕を形成させるとは物理学的に考えられない」32とするだけ....

いわゆる「高知白バイ事件」の再審請求について13路面擦過痕についても,「⑤地点で衝突した自動二輪車が,急旋回しただけで直角に曲がった上記のような擦過痕を形成させるとは物理学的に考えられない」32とするだけで,実はその根拠は判決文からは窺うことができない。A証人の速度に関する目測の正確性については,「年に一,二回は進行中の車両の速度を目測する訓練をしている上に,日ごろの取締中にも目測能力を養う努力をしている」とするが,訓練の成果の検討はなされていない。白バイの後方を走行していたE 証言についても,白バイが「時速約60キロメートルで進行中の軽四貨物自動車の10メートル足らず前に発進直後に左折して進入したばかりか,直ぐに第二車線に進路を変更したことになり,いかにも危険で不合理な運転態度である」33とし否定しているが,最初から白バイの無瑕疵性を前提としているとしかいえないのではなかろうか。さらに,V隊員の過失についても,「V隊員に過失があったか否かは,被告人に過失があったか否かと直接関係がない」34とするが,これでは交通事犯は結果責任と同義になってしまうのではなかろうか。期待可能性の議論の嚆矢がドイツの暴れ馬事件であったことを想起しても,控訴審判決は,結論先にありきとの疑念を拭えないのである。なお,Xは控訴審判決に対して最高裁に上告したが,最(二)決平成20年8 月20日判例集未掲載35は,特に審理に入ることなく,形式的に上告を退けている。Ⅳ 再審請求における諸問題筆者の確定判決に対する若干の疑問点を前章では示したが,今回の請求がなされた再審の訴えにおいては,スリップ痕の解析書と衝突時のバスの乗客の新証言を新証拠として,再審請求がなされている36。本章では,まず,再審請求32 同前11頁以下。33 同前16頁以下。34 同前20頁。35 最(二)決平成20年8 月20日判例集未掲載。URL: http://1st.geocities.jp/zassousien/saikousaihanketu.pdf(2014年9 月1 日検索)参照。36 平成22年10月18日「再審請求書」15頁以下。