109号

109号 page 19/104

電子ブックを開く

このページは 109号 の電子ブックに掲載されている19ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
いわゆる「高知白バイ事件」の再審請求について17らである53。結局,私見では,故意による捏造の証明には格別の困難が予想される再審の現状では,本件でも旧証拠の再評価が重要であり,その際に確定判決が前提とする....

いわゆる「高知白バイ事件」の再審請求について17らである53。結局,私見では,故意による捏造の証明には格別の困難が予想される再審の現状では,本件でも旧証拠の再評価が重要であり,その際に確定判決が前提とするバスが動いていたとの間接事実をスリップ痕がどこまで証明しているかとの判断を,再審請求受訴裁判所がどの位真摯に検討するかに再審請求の成否はかかっており,その判断には,スリップ痕の由来に対する請求人側の疑義にどう応えるかという課題への取り組みは避けられないように思われる54。Ⅴ おわりに本稿では,「身近な」冤罪事件の例として,いわゆる「高知白バイ事件」を取り上げ,現在再審請求中の事件の事実認定に関する若干の疑問点を検討してきた。本来論ずべき点は多岐にわたるものの,紙幅の制約等もあり,紹介やコメントにとどめた点も少なくない。個々の論点の本格的な検討は,他日を期すこととしたい。とはいえ,本件の事故そのものが特別複雑なものである訳ではない。自歩道53 同前1081頁は,証言の虚偽等を理由とする2 号再審についてではあるが,そのような場合に「刑訴435条2 号の再審事由と刑訴435条6 号の再審事由が併せて主張される場合があり得る。この場合6 号について新旧証拠の総合評価によって判断すべきであるとする判例の枠組みに従えば,偽証であることの疑いが旧証拠を再評価する場面で生じることがあり得る。請求人側が刑訴435条2 号の証明に用いようとする資料と旧証拠を併せ判断したときに,偽証であることが証拠の優越の限度で証明されたと考える場合には,本条によって再審を認めるべきであろう」と指摘しており,この理は他号のファルサ再審にも妥当しよう。ただ,ファルサ再審の困難性に鑑みれば,旧証拠の再評価という作業の理解如何によっては,むしろ437条による再審の道以外に,435条6 号そのものを理由とする再審と考える必要もあるのではなかろうか。もちろん,この点に関して重要なことは,一定の新証拠があり,かつ偽証についても証拠が優越する程度には証明されているにもかかわらず,再審による救済が拒否されてよいのかということであろう。54 本件を袴田事件と単純に比較することはできないものの, 豊崎七絵「最近の再審開始決定における証拠の明白性判断の論理について」『季刊刑事弁護』74号(現代人文社,2013年)91頁以下における袴田事件に関連しての推認力の強い間接事実に関する以下の指摘は,本件のスリップ痕についても重要であろう。「第一に,推認力が『強い』ようにみえても,間接事実である以上,その推認力には必ず限界がある。……第二に,その間接事実自体が,どのような過程で収集・保管された,いかなる証拠に基づいて,どこまで証明されたのかということが,実際はより重要である。」