109号

109号 page 4/104

電子ブックを開く

このページは 109号 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
2 高知論叢 第109号所は袴田事件の再審開始を決定した3。再審開始と同時に刑の執行を停止したことにより,逮捕後48年近くを経て,請求人はようやく自由の身となったものの,同月31日の検察官の即時抗告により,無罪....

2 高知論叢 第109号所は袴田事件の再審開始を決定した3。再審開始と同時に刑の執行を停止したことにより,逮捕後48年近くを経て,請求人はようやく自由の身となったものの,同月31日の検察官の即時抗告により,無罪判決までまだ長い時間を要することになる。約半世紀もの間,冤罪で自由を奪われる苦しみは想像を絶するものがあるが,これらの事案は,故意犯の重大事案であり,社会的にも注目を集めている事案である。他方,昨今では,いわゆる「痴漢冤罪」のように,ひょっとすると自分も巻き込まれることがあるかもしれないと思わせうるような,ある意味で「身近な」冤罪事件も社会問題となっているといえよう。このような,ある意味では「身近な」冤罪事件の例として,交通事犯の冤罪事件が挙げられよう。運転免許保有者数は,警察庁の統計によれば2012年には81,487,846人で,1967年と比較して3.29倍となり4,自動車保有車両数が2014年5月末時点で80,393,084台5となれば,「身近な」との表現も許されよう。本稿では,このような「身近な」冤罪事件の例として,いわゆる「高知白バイ事件」を取り上げ,若干の検討を行うことにより,刑事再審の問題状況の一端を明らかにすると共に,今後の誤判救済のための課題の確認とその対策の一助となしうるための,前提作業としたい。Ⅱ 事件の経過と概要本稿で検討するいわゆる「高知白バイ事件」は,業務上過失致死罪で禁錮1年4 月の実刑を科された事案であり,事故の存在自体は紛れもない事実であるものの,事故の客観的態様については,当初の捜査段階から,被疑者の認識と検察・警察のストーリーに齟齬があったといえようか。事故そのものの存在が自明であったことが,逆にこのような齟齬を生む背景となったともいえよう。3 差し当たり,2014年3 月28日付毎日新聞朝刊1 面等を参照。4 警察庁交通局運転免許課「運転免許統計 平成24年版」(URL: https://www.npA.go.jp/toukei/menkyo/menkyo13/h24_mAin.pdf(2014年9 月1 日検索)1 頁。5 国土交通省自動車局自動車情報課「平成26年5 月末の自動車保有車両数」(URL: http://www.mlit.go.jp/common/000990608.pdf(2014年9 月1 日検索))。