109号

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いわゆる「高知白バイ事件」の再審請求について3つまり,事故の存在そのものは元被告人Xの認識と異なるところがないため,法的に過失があったか否かということを基礎付ける重要な事実について,Xにどれだけその重....

いわゆる「高知白バイ事件」の再審請求について3つまり,事故の存在そのものは元被告人Xの認識と異なるところがないため,法的に過失があったか否かということを基礎付ける重要な事実について,Xにどれだけその重要性が理解されていたかは不明であると共に,捜査側もその点についてXの認識をきちんと確認することが不十分であったようにも思われるのである。事件の現場は片側二車線の大きな道路で,被害車両の進行方向側である上り車線からは右に大きくカーブを始めている地点であり,この二車線にさらに右折レーンが設けられていたが,元被告人Xが運転する中学生たちを乗せたバスが,道路に面したレストランの駐車場を出て上り車線を越えて下り車線へ右折して入ろうとする機会に生じた事故であり,被害車両は高知県警の警察官Vの運転する白バイで,この白バイが,右折しようとしていたX車両に衝突したという事案である6。争点は,Xが注意義務を尽くしたかということであるが,Xは自車が下り車線に入ろうとして停止していたところに猛スピードで走行してきた白バイが衝突したものと認識しており,検察側は,Xが右方への注意義務を怠って,事故を発生させたとの筋書きで捜査を進めたといえようか。特に,通常の交通事故と若干異なる本件の特殊性は,被害車両が警察車両だったことであり,検察側証人の目撃者がVと同僚の警察官Aであることなどのほか,確定有罪判決では本件の衝突の際のものとされたXの車両のスリップ痕であり,再審請求人X側からは,当初からこのスリップ痕等に捏造等の疑義がもたれることとなった。上記の事件発生は,2006年3 月3 日であるが,それ以降の経過を確認しておきたい7。事故発生によりXは現行犯逮捕され,一旦土佐署で取り調べられた後,6 2013年12月27日の高知大学・茨城大学刑法合同ゼミで現場を確認した。なお,本事件については,2010年度以降,高知大学刑法ゼミにおける事件研究の課題としてきた。また,2010年及び2013年に実施した高知大学・茨城大学刑法合同ゼミにおいて,検討の素材とした。本稿で使用した資料等については,本件再審請求人である片岡晴彦氏及び高知大学刑法ゼミ2012年卒業生である綱島健二氏から多くを提供して頂いた。厚く御礼申し上げる。7 以下の叙述については,再審請求書別紙1「原判決の不備・不当性・異常性 真実究明義務を放棄した裁判官による誤判の本件刑事裁判」2 頁以下のほか, 前掲注(6)で述