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54 高知論叢 第109号者の商業上の機密保持(commercial sensitivities)から問題が生じないかという視点から検討が行われている。また,開示の範囲について企業間の比較可能性の観点からPRA の適用範囲に限定せず,....

54 高知論叢 第109号者の商業上の機密保持(commercial sensitivities)から問題が生じないかという視点から検討が行われている。また,開示の範囲について企業間の比較可能性の観点からPRA の適用範囲に限定せず,ダイナミックに管理されるリスクに対する実体のすべてのエクスポージャーとする提案を行っている。3.PRA の問題点とDP 公表の意味DP は,銀行における金利リスク管理を例にあげ,実体のダイナミックなリスク管理を財務諸表で表すための新しいアプローチであるPRA を提案している。この提案の理由として,現行の会計基準におけるヘッジ会計をダイナミックなリスク管理に適用するためには,リスク管理を会計基準の要件と整合的になるようヘッジの指定をする必要があり,結果として財務諸表に表された数値はリスク管理の状況を表さない場合があることや「今日,ヘッジ会計はダイナミックなリスク管理そのものを表すためではなく,損益のボラティリティに対処するためにしばしば用いられるので,それは,すべてのダイナミックなリスク管理ではなくいくつかを反映するだけであるかもしれない47」というように,現在認められているヘッジ会計は,ダイナミックなリスク管理を財務諸表に表すために用いられておらず,ダイナミックなリスク管理の有用な情報を提供できていないことをあげている。DP におけるPRA の提案は,こうした問題に対する解決策を探るとともに,新しい提案が受け入れられるか(現在の会計基準の問題解決が必要か)という問いかけであるといえる。しかし,DP で考えられている誠実な表現にもとづく新しい会計は,財務諸表作成者の判断の余地を広げるものとなることから会計処理が恣意的となる可能性や比較可能性の問題を内在させている。その一方で,リスク管理を財務諸表において誠実に表現をするという論理は,これまで認識されなかった実務を認識する必要性を合理的に説明するという役割を果たすことで,恣意性や比較可能性といった問題を内包しているとしても,有用な情報たりうるという合意形成をはかるものとなっている。また,これま